ラダックとメキシコ

『幸せの経済学』という映画を観てきました。
上映後、同作品のヘレナ・ノーバーグ=ホッジさんと、『ミツバチの羽音と地球の回転』の鎌仲ひとみ監督とのトークがありました。
映画についても、トークについても、いろいろ教わったことがあるので書きたいのですが、まず、そのトークの中で出た「TPP」について。
TPPを知るためには、メキシコがNFTA(北米自由貿易協定、1994年)によってどう変わったかを見ると理解しやすい、というヘレナ監督の言葉に従って以下に、まとめてみました。
映画にも出てきた、辻信一さんに(僕が)インタビューした「エセコミ39号」(2006年)からの抜粋です。
(メキシコは)世界の中でもっとも早く穀物を作り、農的な暮らしを始めた場所のひとつであり、現在世界に分散している様々な食べ物の多くは、メキシコが原産です。ところがいま、メキシコの主食のトウモロコシはメキシコが世界最大の輸入国になっている。
これはメキシコの農的な暮らしの破壊なんです。アメリカから入ってくる遺伝子組み換えのトウモロコシの方がずっと安いから、メキシコの小生産者がやっていけなくなる。それはアメリカが正当に競争してるわけじゃなくて、補助金を使って農業を後ろから支えることによって、力ずくで値段を下げている。メキシコに、いわばトウモロコシの洪水を流しているわけです。
それまでトウモロコシを作っていたメキシコの小生産者は農村を出て、都会に出て行かなくてはならない。あるいはアメリカに不法にでも移住しなくてはならない。メキシコの田舎の多くの場所に若い人は残っていません。日本の地方もそうですが、その極端な話がメキシコにある。
「自由化」されることによって、(基本的な食料、豆やトウモロコシなどの)値段が上がって、多くの人が食べられなくなった。格差がどんどん広がっている。
映画の中では、インドのラダックが例に出ていました。急速な近代化によって、ラダックで採れた小麦やバターより、ヒマラヤを越えてトラックで運ばれてきたインド産の小麦やバターの方が安く、ラダックでは伝統的な食の在り方、地域の共同体が失われ、それまでなかった貧富の格差が広がっている、と。
NAFTAによって土地や仕事を失い、「もうたくさんだ!」と蜂起したメキシコの農民たちが、サパティスタです。
追記、メモ
グローバリズムに対して、「いま、一緒にそうならなけらば取り残される」というふうに思い込まされてる。実はそうではない、自分たちのニーズを考える。外国の投機的、多国籍企業への依存をやめて、地域社会をつくる。ローカリズムローカリゼーショングローバリズムの弊害=地域コミュニティの崩壊、失業、貧富の格差、環境汚染。ローカリズムの利点=経済的成長、意味のある仕事、環境保護
情報がいっぺんに速く来ると、そもそもの前提について問いかけることをしません。問いかけないことが、その流れの速度をさらに推し進めてしまう。〉などなど。
ローカリズムのほうが経済的成長がある、とする根拠がちょっと見えにくかった。
「環境問題は、環境に優しいものを買うだけでは解決しない」という言葉が鋭かった。遠くから運ばれてくる食べ物が、地元で採れたものより安いのはおかしなこと。
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