トークイベント「アルバムの力」

12月5日。
御徒町の「3331」で開かれたトークイベント「アルバムの力」に行ってきました。雑誌「Re:S」編集長の藤本智士さん、写真家の浅田政志さん、ミュージシャンの早瀬直久さん(ベベチオ)が出演。被災した写真の洗浄というのが後半のテーマでした。
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震災後、何かできることがないかと模索していた編集者の藤本さん、写真家の浅田さん。
「テレビに映った映像で、瓦礫となってしまった家に戻ってきた被災者が、何よりもまずアルバムを探している姿を見て衝撃を受けた」(藤本)。
浅田さんは4月に岩手県野田村で写真洗浄をしていた若者に出会い、翌日から自分も参加する。
「自分も写真に関わってるので、その青年と話したくなった。彼はたまたま拾ったアルバムが知り合いのものだったので届けたらすごく喜んでもらえて、それから落ちてるアルバムを探して、自衛隊が見つけたアルバムも受け取り、ひとりで洗い始めたんです。僕も次の日からそこで洗浄に加わった」(浅田)
藤本さんと浅田さんのふたりがタッグを組み、この被災地の状況を伝えるために「アルバム・エキスポ・ニッポン」というプロジェクトを始める。
7月、最初に訪れた宮城県石巻。避難所をまわって子どもたちにチェキを渡すと、写真がすぐ出てくるのが楽しくてみんなたくさん撮ってくれた。小学生のひとりが「これがちゃんとアルバムになってればうれしいのに」と、自分で画用紙に撮った写真を貼り始めた。「古いアルバムを洗浄して写真を救うぞ」という気持ちで行ったのに、いきなり「未来のアルバム」に出会った。
次に訪れたのが、浅田さんが写真洗浄を知るきっかけになった野田村。4月は冷たい建物の外で写真洗浄が行われていたが、町の図書館が写真保管室に変わっていた。
写真洗浄は写真を持ち主に返すことがゴール。ここでは洗い終わった写真を、ポケットアルバムに入れて、壁に貼るという展示をした。野田村はコミュニティが小さいので探しやすい。
気仙沼では、体育館にブルーシートを敷いてその上に陳列していた。
銀塩写真は表面がゼラチンでできていて、これはバクテリアの大好物。早く洗ってバクテリアを除去しなければ浸食されて写真が消えてしまう。しかし、一枚一枚洗っていくのに人手が足りない。
宮城県名取市閖上(ゆりあげ)で写真洗浄を始めたタカイさん。彼は被災写真を県外(のボランティア団体)に送って洗ってもらい、送り返してもらう方法をとった。
岩手県大船渡。この地で写真洗浄を始めたキンノさんは元々、本の修復士。その専門的知識を写真洗浄にいかす。写真のカビはエタノールで取る。アルバムは東芝から提供してもらった冷凍庫で保存する。写真の「集中治療室」。
参加している主婦たちの「ホームセンター使い」なアイデアも取り入れる(例えば、写真の水分を取るために風呂マットを利用する)。
「全部を洗い終わるまではあと2年」。
発見された場所など詳細な「カルテ」を作ること、持ち主がわかったらすぐ電話すること、地域の人たちが利用する公衆浴場に、写真を展示するなどの工夫で、写真が戻る率は他と比べて抜群に高く、約50パーセントにも上がった。
志津川。廃校で写真を公開。ひとつの教室に、ひとつの町のを。
宮城県山元町。福島第一原発の近くで震災直後、情報が途絶えていた町。
ここに来たのが、京大出身で情報社会学会で働くミゾグチくん。彼は情報の整理を考える。洗浄し、ポケットアルバムに写真を入れていくときにナンバリングし、複写し、データ化していく。手間のかかることだけどデータ化によって、「顔認識」で写真を探すことができるようになった。
「こういった現場をまわってアルバムの力を再認識した。この10年間の写真がほとんどないことにショックを受けた。いかにこの10年、みんながプリントしてこなかったのかが露呈した」(藤本)
……というように各地の写真洗浄事情をおふたりのトークで知ることができました。この秋、3331での写真洗浄に僕も参加して、興味を持っていただけに、得ること多いトークイベントでした。