「明日のために靴を磨こう」実践編

「高尾山天狗トレイル」の参加記録証が先日届いたので(僕は222位で、4時間06分25秒)、意を決して、あの日以来、袋に入れたまま部屋の隅に置いたままで、なるたけ見ないようにしていた靴を洗った!
なんといっても雨の、泥の山道を4時間以上、走ったのだ(その日の日記→)。袋から取り出すときは、ちょっとした勇気が必要でした。果たして、3週間近くそのまま放置されていた靴は、ボンペイ遺跡から発掘された火山噴火にまきこまれた哀れなランナーの遺品、といったありさま。 シニカルな現代美術作品に見えなくもない? 乾いた泥が膜をつくっている灰色の物体。これをブラシでゴシゴシこすって(削って)、できる範囲で洗い流しました。繊維に染み込んだ泥できっとGORE-TEXの機能はもうゼロだろうな。いまベランダに干しています(下の写真)。
突然だけど、たとえばプロゴルフって「年間獲得賞金王」の行方のことばっかり報道してるじゃないですか。尺度が「獲得賞金」しかないとしたら、年間獲得労働賃金が異様に低い僕なんか「おかねしかないせかい」では最低レベルの人間です。でも、走り始めたら僕みたいなヘボいランナーでも、タイムという基準があらわれた。あと、距離も。もうひとつの価値観のある世界。ここでは、ランナー同士の挨拶は「(フルの/10キロの)ベストタイムは?」とか「月間走行距離は?」になります。速ければ凄いとか、長ければ偉いとかはあんまり気にしない。速い人もいるし、遅い人もいる。たくさん走る人もいるし、少ない人もいるというだけ。「高尾山天狗トレイル」で僕より1時間ぐらい遅かったkwlskiさんは、僕が気づかなかった道中の針葉樹と広葉樹の違いや、鳥の鳴き声を聞き分けてたし。
それと、新たな時間軸を発見できました。秋から始まるシーズン、日本各地でいっぱいあるマラソン大会のどれかにエントリーして(たいてい3〜4ヶ月ぐらい前に)、それに向けて走り込み期間とか、調整期間とかのサイクルを自分でつくっていく。10キロの大会に出てスピードのトレーニングしたり、ハーフマラソンで距離の感覚を得たりしながら。農業や漁をやってる人たちも、その人たちなりの時間軸を持っているだろうけど、昔の僕はそういうことも意識してなかった。
こういう「おかねしかないせかい」以外の価値観、時間軸を持てたのが走り始めていちばんいいことです。「走る」以外にも、人それぞれ、「絵を描く」ことや「ガーデニングをする」ことや「縫う」ことや「韻を踏む」ことなど、無数に価値観があることがわかると、疲弊しない!