追悼 岡田マサルさん

tuktukcafe062008-12-10

岡田マサルさん が12月9日、天に旅立ちました。
これからはEagleのよう自由に天を舞い、僕らに声をかけてください。
僕が岡田マサルさんと会ったのは、2002年、ネイティヴ・アメリカンのアクティビスト、トム・ラブランクのレコーディングでだったと思う。リリースの当ても何もなかったのに、山口洋&細海魚がトラックを創り、その上にトム・ラブランクのポエトリー・リーディングが重ねられた。マサルさんはこのアルバムのプロデューサーだった。
プロデューサーとは必ずしも資金を出して回収の計算をする人、という意味ではない。この場合、マサルさんは、山口洋がよく使う言葉、「エンカレッジする」人だった。励ます、その情熱でこの無軌道なプロジェクトを引っ張っていく。だって彼は三重県亀山市にある自然食レストラン「月の庭」の主人であり、音楽業界の人ではないのだ。
レコーディングは完成し、ジャケットはデザイナーの駿東宏さんが担当し、アルバムタイトルの『Eagle Talk』も駿東さんが発案した。リリース先を探すために山口洋が走り回り(プレゼン資料もビデオクリップも山口洋が作り)、リリースが決まった。マサルさんは本気でグラミー賞ネイティブ・アメリカン部門を狙うと言っていた。僕もトム・ラブランクにインタビューをした。でも僕はどうしてあのときマサルさんにもインタビューをしなかったのだろう。
2002年夏、マサルさんは地元亀山の神社でイベントを開催した。山口洋の日記を引用する。
〈 記憶が確かなら、我が友、マサルの一言ですべては始まった。奴は知性と恥性を合わせ持ったイノシシみたいな男。走りだしたら止まらない。横浜銀蝿が束になっても奴には勝てない。でもって顔はウリ坊。ボサボサの頭頂部から光を放つこともある。そんな彼がネイティヴ・アメリカンのアクティビスト、トム・ラブランク氏と俺のコンサートを神社でやると云い出した。「響き合う魂」なんて言葉を人は簡単に使うんだけれど、そんなに簡単に共鳴なんてできやしない。で、俺は考えた。細海魚だ。武満徹亡き今、内的宇宙と外的宇宙を同じレベルにおいて音楽で語れるのは彼しか居ない。こうしてこのコンサートは穴のあいた舟で大海にこぎ出した。で、ウリ坊暴れる、暴れる。小舟は簡単に沈没するかと思いきや、気が付くといろんな小舟があっちこっちから集まってきていて、波飛沫をかぶりながらも大海を進んでいくのであった。無茶苦茶だ。無軌道すぎる。何処へ向かってるのかって?俺は知らん。多分、明日の方向だろう。
魚ちゃんと俺。珍しくうち合わせなんてものを東京で重ねてはいたのだが、結論は「なるようにしかならん」。答えなんてないから応えてみるのだよ。たまに堪えることもあるだろうけど。「それでいいのだ」とバカボンのパパもそう云ってた。
駅には愛のあるお迎えが。「月の庭」で絶品ランチをごちそうになり、会場の神社に着くと、そこには巨大なバンブー・ドームが。あちゃー、ウリ坊。こりゃまた暴走しちゃったのね。でもって日本中からいろんな人が集まってくる。オリジナル・ヒッピー世代の人々、詩人、流浪の民、近所のおっさん、おばさん、ボランティアのスタッフ、迷える若人、炎の若人、エトセトラ。ウチのスタッフ達も仕事の範疇を遙かに超えて、縦横無尽に働いている。
そこにトム氏が登場してリハーサル。エネルギーの所在を確認して、それをぶつけ合ってみる。確かな手応え。そして明日の本番は?と聞かれても、「なるようにしかならん」。魚ちゃんは飯も喰わず、蚊に喰われながら新しいデータを創った。俺は新たに出会った人々とさんざ飲んだくれる。いつ眠ったのか?あまり記憶にない。でも神社で気絶ってのも悪くはない。ヤブ蚊さえいなければ。〉
この日記、翌日のイベント本番の描写も美しい! なぜ僕はここに行かなかったのだろう。
舞踏家としての岡田マサルさん(歌舞伎昌三)さんを、僕は2回しか観ていない。去年1月の吉祥寺スターパインズカフェでのサヨコオトナラと、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットのステージ。同じく2月、沖縄辺野古でのPeace Music Festa!でのソウルフラワーと渋さ知らズでのステージ。マサルさんは病に冒されながらも命を燃やして舞っていた。
追記  マサルさんの葬儀が行なわれた12月12日、僕は代々木公園で開催されたcandle Juneによるキャンドルナイトに行きました。キャンドルナイトの協賛はカメヤマローソクで、「月の庭」のある三重県亀山市で作られたであろうローソクが会場のいろんな場所を照らし、空には大きな月が出ていて、代々木公園はまるで文字通り「月の庭」のようでした。
『Eagle Talk』の通信販売を行なっているサイトを紹介します。→Artist-Direct Shop 405
以下は、友部正人さんによる葬儀の日の日記(2008年12月12日)。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hanao/001-tomobe/tomobemasatoyori.html
ソウルフラワー中川敬さんによる追悼文。
http://www.breast.co.jp/soulflower/newslog/okadamasaru.html