高尾山に行ってきました

昨日は一日、高尾山の中にいました。
先日の日記に書いた「ドリームキャッチャーバリケード」の続き。
ドリームキャッチャー作りのワークショップがこの1週間で、代々木公園、下北沢、三軒茶屋、高円寺、国立、布田、そして高尾山で行なわれ、昨日は最後のワークショップと、これまでに作り上げたり、日本各地から送られてきたドリームキャッチャーを高尾山の現地で繋げる日。
案内には、高尾駅からバスで15分と書いてあったけど、地図を見ると高尾山口駅からなら徒歩20分とあるから僕は歩きました。乗らなかったバス運賃で、野沢菜のおやきを食べながら。
地図通り川沿いに歩いていくと、問題のフェンスが! 「和居和居デッキ」につながる道を先月末、国交省がフェンスで封鎖し、警備員常駐。で、その結果、これまでだったら数分で行けるデッキに、急斜面を登り降りする「遊歩道迂回路」を20分もかけて、行かなければならなくなったそうだ(参照→JAN JANニュース「高尾山・トラスト地のデッキがピンチです」)。
ところが僕はこの遊歩道の入り口を誤り(僕にはよくあること)、道ではなく山の斜面をそのまま登ってしまった。最初は「これ、獣道だよ」なんて思ってたのですが、勝手に進行方向の目印にしていた、森の中のところどころ、木の枝に結んである蛍光ピンクのリボンを追って登っているうちに、「獣道」というよりは「道無き道」に迷い込んでしまい、地面はぬかるんでるし、落ち葉は滑るし、わけのわかんない虫がいるし、倒木は行く手をさえぎるし、枝は僕の身体をひっかくし、何よりも両脚だけじゃその場に留まっていることさえできない急斜面で、そうすると手も使って三点確保、というのが登山の常道。だけど僕の片手は、自宅で作ってきた直径80センチぐらいの竹の輪に編んだドリームキャッチャーが3個ある。つまり、三点確保したらもう身動きできない。身動きできないままずるずると滑落していくということが何回かあり、これはもうダメだと。目印にしてたリボンもいつのまにか無くなってしまったし(映画『ブレアウィッチプロジェクト』的だと、危機的状況にいながらも思った)、これは一度戻ろうと降り始めたら、急斜面というのは登ることよりも安全に降りるほうが難しいのです。動けずに困っていたら左手の方角から人の声がする。声をかけたらやっぱりドリームキャッチャー作りに来た人たちで、僕は彼女たちの声に導かれて正しい「遊歩道迂回路」に入り、デッキにたどり着いたのです。
途中、ふっとばします。
夜、8時ぐらいまでこのデッキにいました。
ドリームキャッチャーバリケードは、山の中に国交省が建てた緑色のフェンスみたいに威圧的でも工業的でもなく(また、「緑色」というのがいやらしいね。自然の緑とはまったく親和性がないのに!)、かといってみんなの祈りが込められていても呪術的に恐ろしげに見えるかというとそうでもない。キャンドルによって森の闇の中に浮かび上がったそれは、アートとしか言いようがない。無数のドリームキャッチャーが立体的に組まれて白い繭のように、動物的な曲線を描きながらデッキを囲んでいる。幻想的であり祝祭的な美しさ!
ここは、このドリームキャッチャーバリケードというアイデアを出した空間造形作家・三橋玄さんの言葉を引用します。
〈ひとつの固まりでありながら、たくさんの個が見え、 「デッキ」にとどまる人をやさしく包みこみ、 狂気を覚ますような美しさをもったバリケードを作りましょう〉
shing02は“ 長いものはぶった切る出る杭は打ち返す芸術で訴える!”と「400」で歌ったけど(この夏、沖縄の高江でも歌われた)、ドリームキャッチャーバリケードは、山を削りデッキを排除しようとする重機の牙から芸術で守る!
もちろん力学的に、ショベルカーだの撤去作業から守れるわけはないよ。数日後には引きはがされ、デッキとともに破壊され、撤去されるかもしれない。
でも、今日一緒にドリームキャッチャーを作っていたひとりが、「これ、トンネル工事の人も見たら感動するよね」とぼそっと言ってたけど、この美しさは人の心を動かすと僕も信じる。中に入ってみたくなる。壊すことを、撤去することを「悪い」ことだと思うはず。「だからどうだ?」と問われても返答に困るけど、僕はこのプロジェクトに参加できてうれしい。非暴力芸術的抵抗。
ドリームキャッチャープロジェクト、「祈りの繭」に包まれたデッキ全体の写真は、僕はうまく撮影できませんでした。そんな時間もなかったし、これは網膜に映せばいいもの、と思ったから。だから、デッキの一部の写真だけを掲載します。本当の美しさは、ここまで行き、包まれてみないとわからない。でも、きっと今日以降、強制撤去側と、このドリームキャッチャープロジェクトで守られたデッキにとどまっている人たちとの対決(破壊や強制撤去を前提にしない対話であってほしい!)がテレビのニュースや新聞で見られると思います。どうぞ注目してください。世界各地で座り込みの抵抗をしている人たちにも見てもらいたい。
高尾山にトンネルを掘ることの問題点は、「高尾ラブメッセンジャーキャンペーン」というサイトにもまとめられています。高尾山の自然を守る環境NGO「虔十の会」(ケンジュウノカイ)のサイトもチェックを。