終わらない始まり

フリッパーズギター以降、ボ・ガンボス以降、ブルーハーツ以降にデビューしたということに、SUPER BUTTER DOGは自覚的なバンドだったと思う。
解散ツアーのファイナル、今夜の日比谷野音のステージで、永積タカシは「バタードッグとは、まさに“                     ”」(←日比谷に来た人だけが知ってる)と、彼ら自身のある曲の中のフレーズを引用して、定義した。しかも2回。言い得て妙! いとうせいこう風に言えば、「無があるじゃないか!」(from 『解体屋外伝』)的な発想である。
だから、彼らはナンセンスを、言葉遊びを、ファンクビートに乗せて歌い続けた。その日本語詞(どこか妙に繊細なところもあった)は、奇跡的にファンクにマッチした。バタードッグの大発明。その結果、彼らはこの14年間で「確実に歴史を創った」(←今夜のタケの言葉)。
しかし、永積君は、歌うべき新たなテーマを見つけた。彼の美声で、彼のメロディーで、新たなことを歌おうと思ったとき、バンドからハナレてしまうのは必然だったし、それが第2の「音タイム」の始まりだった。
解散とは、終わらないことの始まりだと思う。
先週の『爆問学問』というテレビ番組で、爆笑問題太田光が、天文学の教授とビッグバン(宇宙の誕生時の爆発)について話をしていて、「宇宙が膨張を続けているのなら、爆発(ビッグバン)はまだ続いているということじゃないのか」というようなことを言っていた。理系の天文学教授は抽象的なその言いまわしをどうもよく理解できなかったようだったけど、太田光は、意見の交換で生まれるのも自分内部から外への「爆発」であり、それは収束しない、というようなことをさらに続けて伝えたがっていた。
今夜の4時間近く続いた解散ライヴも、そんな「爆発」であり、 それはあの場にいた人たちに作用し、野音の外で聴き、歓声を返すことで参加していた人たちにも作用し、拡散していく。だから、バンドの解散は終わりではない。
フィッシュマンズボ・ガンボスのようにメンバーの死で、本当に終わってしまったバンドもあるけど、そんな縁起でもないことは言わない。彼らの歌を待ち望んでいる人がいる限り、バタードッグはいつかまた復活するはず。それほど大きな爆発だった。
舞台アートの、多田玲子 aka lakin' the kiiiiiiiは、スーパー素晴らしい仕事っぷりだった!