「SHIMOKITA VOICE」

tuktukcafe062008-08-29

「SHIMOKITA VOICE」とは、下北沢の再開発問題を考えるイベント。
金土日と今週末3日間の開催で、考えてみたら僕は今日しか行けないので足を運んできました。
観たのは、北沢タウンホールでのオープニング・シンポジウム(入場無料)。
「下北沢の再開発計画、今どうなっているの?」─下北沢文化の現況と展望
下北沢の再開発問題について基本的な情報を共有し、現状やこれからの展望についてざっくばらんなディスカッションを行う。また、下北沢の問題は「下北沢だけの問題」ではない。東京や日本全体の都市像についての長期的なビジョンとリンクする問題として、議論を深めていく。スクラップ・アンド・ビルドの都市ではない、持続可能な都市のあり方とは? 人がゆるやかに繋がることのできるコミュニティとは? 人々が参加して作る街とは?
■パネリスト
松原隆一郎東京大学大学院教授・経済学)
マエキタミヤコ (「サステナ」代表)
石本伸晃 (「下北沢商業者協議会」、弁護士)
下平憲治 (「Save the 下北沢」代表)
原田学 (「まもれシモキタ!行政訴訟の会」代表)
大木雄高 (「下北沢商業者協議会」代表)
■司会
伊藤麻紀 (「まもれシモキタ!行政訴訟の会」事務局)
実は僕は下北沢がそんなに好きというわけでもないのですが(ごめんなさい、渋谷も苦手なんです。好きなのは地元の中野と高円寺)、大ファンのマエキタミヤコさんが出ることと、ここでの議論が、自分がいま関心を持ってる沖縄の泡瀬干潟辺野古や高江に何かヒントをもらえるんじゃないかなと思って参加しました。もちろん、沖縄には「米軍」という下北沢とは全く別のファクターがあるのだけど。
パネリストの中では松原教授とマエキタさんがコメンテーターというような立場で、他の方々が下北沢在住の再開発計画に直面している当事者たちという構図かなと思っていたけど、松原教授も下北沢に馴染みが深いようだったし(プロレス・バーに通っていたというエピソードが笑えた)、マエキタさんもこれまでの素晴らしい仕事からわかるように、こういったテーマのシンポジウムに最適人者です。
さらに、この「当事者」たちが、自分がイメージしていた「住民運動のリーダー」とちょっと違って面白かった。下北沢がいかに「文化」と密接に関わって育ってきた町かというのが彼らの発言からもわかりました。
中でも長老のように見えた男性から、「サウンド・デモを組んで都庁まで行った」というような発言が出てきて(※このレポートはすべて僕の記憶からなので、発言等に事実誤認がありましたら僕の責任です。そこらへん割引サービスでだいたいこんなニュアンスだったと思って読んでください)、うわー、サウンド・デモ!?と驚いてたら、その長老は、僕のようなジャズ門外漢でも名前は聞いたことのある老舗ジャズ喫茶のオーナーでした。そんな人が下北沢の商店街をまとめてる。
彼らは「下北沢の魅力を作ってきたのは個人たち。小さな、へんな個人の店がいろいろあって、そこに人が集まってきて町ができた」「下北沢は商業と文化が一体化していた町」と言います。「一体化していた」と過去形だったのは、そんな小さく、へんな店のオーナーたちが歳を取り引退し、二代目が店をやめてテナント業を始め、自分は下北沢から離れて、外から来る人に場所を貸す。でも、それはいままでの下北沢の成り立ちと違う。東京では有名な店も、下北沢で根付くとは必ずしも限らない。家賃は高くなり、個人が新しく店を始めるのが難しくなってきている。
下北沢の再開発計画は、細い通りに消防車などが通れないから、というのを前にどこからか聞いたことがあったんだけど、こうして実際に当事者たちから話を聞いてみると、違う思惑がこの計画を推し進めようとしてるんじゃないかというのが見えてくる。沖縄の泡瀬干潟でいうところの「自然」に対して、下北沢では「この町の文化」が危機にさらされてる。駅前に大きなロータリーができ、高層ビルが建ち、これまでの雑然とした商店街の代わりに広い道路ができたら、それは下北沢なのだろうか。
松原教授は町の再開発が必要なケースもあるけれど、下北沢は京都と同じようにこれまでの、人と人との繋がりから発展してきた「下北沢らしさ」を活かしていくべきだと述べていました。
駅前が再開発により高層ビル化して、新たな道路で人の流れが分断されると、町が死んでしまうかもしれないと。都市計画には「盆栽士」(←この言葉はじめて聴いた!)のように、〜〜な(←大事なところなのに忘れてしまった)活かし方をしないといけないと発言。
マエキタミヤコさんは、松原教授が出した京都の町屋の例を受けて、「高層(ビル)が豊か、と勘違いしてる人の意識を変えないといけない。(いまの下北沢のような)低層(建物)の町がいい、『Low is Beautiful』だと下北沢の人たちが提言すること。低層の町の豊かさ、それと町の多様化が必要ということを、下北沢から発信していく。下北沢の人たちが勇気をもってそう宣言することが大事」というような話をしました。
マエキタさんは取り壊しが決まってしまった阿佐ヶ谷住宅の貴重さも数年前に説いてましたしね。
でも、それをわかってもらうための合い言葉、標語が大切、と言います。 マエキタさんは「伝える」ことをいつも考えてる人です。僕はそこを尊敬するし、マエキタさんが瞬時に出してくる、誰もが納得しそうな、普遍的なのに新鮮なアイデアにいつもぞくぞくさせられます。
で、僕はこのシンポジウムでみんなの話を聞いてるうちに、下北沢が好きになってしまった!
いとうせいこう作詞の、いとうせいこうポメラニアンズ「ハレルヤ」のこの歌詞を連想しました。
  届かないって 信じきって やってみたことないくせに
  伝わらないわけは伝えてないからだろ
  松原教授が話した東京の下町「亀有」再開発のエピソード。
松原教授も彼の小6の息子も、マンガ『こちら亀有公園駅前派出所』のファンだそうです。それで、この夏の息子の自由研究に亀有見学をすると決めて実際に行ってみたら、『こち亀』に描かれていた「亀有らしさ」は現実にはもうなくて(「両さん煎餅」とかは売ってるらしいけど)、実際にマンガにもこの10年ぐらい「亀有」の描写は出てきてないそうです。亀有も『こち亀』もそんなふうになってるなんて知らなかった!
帰りにマエキタさんともりばやしみほさんに挨拶して、アラーキーが撮った下北沢の写真を見て、会場のタウンホールを出ました。ところが、偶然、マエキタさんと同じ電車だったので、沖縄の話とかをして帰りました。嬉しかった!