「のびのびイルコモンズ」


ビックリした。
今朝、mixiで流れてきたイルコモンズが逮捕されたというニュース。
7月5日、札幌でのデモで、サウンドカーの荷台に乗ってDJをしようとしたところを警察に逮捕されたそうだ。非道い。
僕は、イルコモンズに出会わなかったら今回の洞爺湖G8サミットも何も疑問に思わなかったかもしれない。バカなことに。
地球温暖化の問題を、世界の貧困格差解消のための解決策などを、「先進国」首脳たちが集まって考える、むしろいいことじゃん、とさえ思ってたかもしれない。でも、後出しジャンケンみたいだけど、洞爺湖G8サミットで何か成果があったと「信じる」ことができる? できない。考えてみれば当たり前だ。金持ち代表が集まって、それで世界の未来を、自分たちの都合がいい方向にではなく考えるわけがない。
バカな僕に、「グローバリズム」とG8への疑問を結びつけてくれたのはイルコモンズのblogだった。『月刊オルタ』という雑誌に載ってたこのコラムを読んだのがきっかけだ。
僕は、何かを疑問に思ったら、知りたいと思ったら、話を聞きに、誰かに会いに行こうと思う。会うのが難しかったら調べるし、本を読む。でも「会う」と何か予期してない繋がりも生まれるから面白い。
G8のことでは、5月末に早稲田大学でのシンポジウムに行った。そこで去年のドイツでのG8サミットに関するドキュメンタリー映画を観て、話を聞き、グローバリズムに反対する活動家、アクティビストたちが、サミット会場の近くにキャンプをし、抗議をし、マスメディアだけではなく自分たちでG8サミットを報道することを知った。遅いけど、少しだけ前進。
イルコモンズは今回の洞爺湖G8サミットに向けてのキャンプをとても重要なものと考えていた。それはこのコラムを読めばよくわかる。キャンプを「オルタナティブ・ヴィレッジ」と呼び、サミットが「非民主性と新自由主義」なら、キャンプでは「まったく逆のことがおこなわれる」と。
7月5日、札幌で行われた「チャレンジ・ザ・G8サミット 1万人のピースウォーク」については、今朝の朝日新聞でも近藤康太郎記者が記事を書いていた。DJ逮捕の場面を記事から以下に抜粋します。
労働組合の隊列が整然としていたが、サウンドシステムを積んだトラックが現れてから様相が一変。すぐに機動隊が取り囲む。(中略)白人女性が隊列から少し離れて踊りだすと、機動隊の盾が容赦なく突く。1時間ほど歩いてDJが交代した瞬間、機動隊が「もういい!」と叫びDJを同市公安条例違反容疑で逮捕。隊列を広げるよう扇動した疑いという。〉
「ええー!」でしょ? 許可を取ってのサウンドデモだし、交代した瞬間だったら扇動も何もないじゃん。
「G8 Media Network TV」にもDJ逮捕の映像が記録されている。しかし、逮捕されたのがイルコモンズだったとは……(他にもうひとりDJと運転手の合計3人が逮捕されている)。
で、今日、mixiで案内されたのは、阿佐ヶ谷ロフトAにて、このキャンプ、デモの報告会があり、その後、高円寺でサウンドデモがあるというお知らせ。3人をすぐに解放しろ、というのが目的だけど、タイトルは「のびのびイルコモンズ」。このセンスがいいぜ。
阿佐ヶ谷の報告会での発言者は、松本哉素人の乱)、「イレギュラー・リズム・アサイラム」の成田店長(だったと思います)、鶴見済の3氏。
キャンプ、デモの映像をスクリーンで観ながら話すんだけど、不謹慎ながら面白い、楽しそう。実際に3人が逮捕された日はキャンプ参加者みんな気持ちが落ちてたそうだけど(僕も映像を観ただけなのに怒りに燃え、それから落ちた)、そこでも泥酔しながら何度も警察署に抗議に行く松本哉のふらふらっぷりが笑える(この映像も上の「G8 Media Network TV」で観ることができる)。他にも、キャンプでの食事が、世界中から集まってくる人たちのために、誰でも食べられるようにベジタリアン(の中でももっともレギュレーションが厳しいビーガン)用で作られてることや、パペットや、コスチューム、鳴り物など、日本のデモではあまり観られない、外国人多数参加のデモの模様とか。でも、DJや運転手が逮捕された瞬間の映像は、「ここ日本なの?」と思う。僕はテレビのニュースをあまり見ないんだけど、この場面って放送されたのかなあ?
本当は僕はそのあと、王子駅前でのFUNKISTの野外フリーライヴに行く予定だったけど、これはどうしても高円寺でのサウンドデモにそのまま参加しなくてはという気持ちになってしまい(FUNKISTに行くと約束してたのにごめん!>関係するみなさん)、2ヶ月前の高円寺サウンドデモ「高円寺一揆」以来のデモ参加。
高円寺駅の南口には機動隊の装甲バスが3台停めてあって、出発場所の公園にも警官やメモやカメラを手にした公安がいっぱいで、向こうはやる気満々。でも、今日のデモは、目的を「のびのびしたい」、主張も「のびのびさせろ」という申請で行われたという、松本哉らしい(ここらへんは彼の新著『貧乏人の逆襲』筑摩書房を読むと面白い)「まぬけ」っぷり。でも、僕らの本当の、心からの主張は「(逮捕された)ともだちを返せ」なのだ。
サウンドデモはとても楽しい。踊り狂う僕らを警戒し、撮影する公安警察はとてもまぬけ。一時間ぐらいで高円寺を一周し、解散場所に戻ってきたとき、2ヶ月前はここで最後の一曲にイルコモンズが「ONE MORE TIME」 をかけて、大騒ぎになったなあと思い出して僕はちょっとしんみりしたし、彼の不在を作った一味が僕らを囲んでいることに頭にきた。
デモを解散する際に、松本哉が「公安警察はいちばん逮捕しちゃいけない人を逮捕した。今頃、(イルコモンズは)いろんなこと考えてるはず」って言ってたけど、本当にそうだと思う。戻ってきたあとのイルコモンズの言動がすごく楽しみ。そして僕らはあの曲のタイトル通り、もういちど路上で踊るのだ。
追伸
阿佐ヶ谷に駆けつけたはーぴーのレポートはこちら