松本哉『貧乏人の逆襲』を読んだ

貧乏人の逆襲!―タダで生きる方法

おもしろかったー。
第一章の「いざという時の貧乏人生活術」は超テキトーに書き飛ばしてる感があったけど、この本は「しみったれた」節約ハウトゥー本なんかじゃない。
〈我々貧乏人が金をかけずに生活する術を身につけたところで、安月給・高い家賃などを駆使して貧乏人から金を巻き上げる社会のシステムは変わらない。むしろ、あまり金がかからない技術を習得しすぎて、「いや〜、月に5万円あれば金が余ってしかたない」なんて公言しはじめたら、賃金が5万円くらいまで下げられてしまう可能性すらある! おい、これは危ない! そんな奴隷の処世術などは真っ平御免である。〉というのだ。
で、松本哉が提唱するのは、〈地域ぐるみ、貧乏人ぐるみの自給自足作戦! これはすごい。要するに、職場、遊び、家などをひっくるめたとんでもないマヌケエリアがあって、なんでもかんでも自分らでできそうになっていけば何も怖い物がないのだ〉と、高円寺にリサイクルショップ素人の乱を作っていき(増殖中)、地域社会の繋がりを深めていく。この〈「貧乏人が束になったら何とか生きていけたりするのではないか?」という作戦を練っていきたい〉という第二章のタイトルは「無敵の街ぐるみ大作戦」。リサイクルショップからスタートするところから、こういった「地域ぐるみ、貧乏人ぐるみの自給自足作戦」って、まさに僕の尊敬する文化人類学者・関野吉晴さんが理想とする、アマゾン原住民たちの「持続可能な循環型社会」じゃん、って思った。
僕が彼らが高円寺でしてる「マヌケ」な活動(第三章の「反乱のススメ」でたっぷり書かれている)の一端を知ったのは、数年前、中野駅(高円寺の隣りの駅)の駐輪場に停めておいた僕の自転車の前カゴに入っていた告知ビラ「家賃をタダにしろ一揆」からだったと思う。
松本哉が単なる「しみったれた貧乏人」ではないのは(もっと言ってしまえば、「文明」に追いつめられていくアマゾンの原住民たちと違うのは)、社会の常識とされているもの、抑圧してくるものへ逆襲を起こし続けてることだ。例えば、サウンドデモや、杉並区議選への出馬による街を「合法」的に占拠して、〈選挙期間中に、駅前あたりに規制や抑圧だらけの窮屈さを取っ払った解放された空間、言ってしまえば「革命後の世界」を勝手に作ってしまう〉。
僕も今年のメーデーに彼ら(そのときは勝手に「経団連」と名乗ってた)の高円寺サウンドデモに参加して、やたら面白かった。
この本は特に高校生にお勧めしたい、勝手に生きるための教科書。彼ら素人の乱の逆襲を記録してるらしいドキュメンタリー映画『素人の乱』をこの本に続けて観たい!