すべりだい『Morning JAM』


自然な生活風景から紡ぎ出された幸せの歌
歌とウクレレのけんこと、ギターとコーラスのさとしによる沖縄の男女アコースティック・デュオ「すべりだい」のセカンド・アルバム『Morning JAM』。三線も沖縄音階も使わない、そのアコースティック・サウンドを彼らはあえて「居眠り系」と自称する。力みなどどこにもない、揺れるキャンドルの炎のように、聴く者をリラックスさせる優しい歌。それは夜の公園やアパートの屋上など、すべてが彼らの自然な生活風景から紡ぎ出されてきた、まさに「空と星と風の歌」。
前作から約2年半ぶりという長めのリリース・インターバルも、彼らのモットーである「頑張らない」=マイペースなことがひとつの要因だが、ファースト・アルバムが完全に宅録だったのに対し、今作は全曲スタジオ・レコーディングと、待った分以上にその音像はジョートー(沖縄の言い回しで「エクセレント!」の意)になっている。
ヴォーカルのけんこは、モンゴル800をはじめ、数多くのバンドが参加してきた野外フリーイベントのシリーズ「Clap Hands!!」のプロデューサー(同タイトルのオムニバス・アルバムなどもこれまでに3枚リリースしている)やMCとして沖縄のミュージシャンたちに広く慕われている存在。けんこのアイデア、行動力が「妄想エンジン」を点火させるなら、それを冷静に寛容に支え、走らせる役割を果たしているのが、ボサノヴァから、ロック、ファンク、ジャズまで、ジミヘンからジャック・ジョンソンまで幅広く音楽を愛するギタリスト、さとし。
「すべりだい」は、2006年、東京の代々木公園野外ステージでの「Clap Hands!!」2DAYSや、ジュゴンの海で知られる沖縄辺野古での「Peace Music Festa! 辺野古 '07」でも、会場にできるだけゴミを出さないための「エコ班」として活動。そんな演奏以外の活動の多様さが、結成4年の「すべりだい」がミュージシャンとしては「遅咲きの新人」であった理由でもある。しかし彼らが様々な方法で、場所で示してきた沖縄や自然への愛を、今作『Moroning JAM』ではすべてを音楽に込めている。
アルバムタイトルは、2007年秋にけんこが初めて体験した富士山麓でのキャンプインフェス「朝霧JAM」で、夜中、テントサイトで小さな炎を囲んだ仲間内で即興的に唄われた曲名から。このアルバムも小さな音量でもいいので星空の下でそんなふうに聴いてほしい。そしてできたら小さな声でいい、この合唱の輪にその場で加わってほしい。
僕と「すべりだい」KEN子との出会いや、彼女を慕うミュージシャンたちのコメントはこちらのインタビューで。
アルバム『Morning Jam』のジャケット・イラストは、イラストレーター、はらだゆきこさんの作品。イラストに描かれたテーマ(表面と裏面が繋がってる)は「ryuQ」でのすべりだいインタビューで答えられています。