映画『藝州かやぶき紀行』を観てきた

映画『藝州かやぶき紀行』上映+トークショーを観に、朝、ポレポレ東中野まで自転車で行ってきました。映画の日だから1000円だった。いつものように公式サイトも予告編も見ないで行ったのですが、タイトルそのまんま広島の「かやぶき」(茅葺き)屋根の家についてのドキュメンタリーでした。地味で淡々としていて、ちょっと寝てしまった。
上映後のお目当てのトークショーが、次の回の上映時間の関係から10分しかなくて(!)、僕の心の師匠(2006年にインタビューさせてもらってから)、関野吉晴さんが映画の感想を述べたり、この映画の監督からの質問に答えてるうちに終わってしまった。
関野さんはちょうど今週、岩手でかやぶきの家に住んで炭を焼いていたそうです。で、映画の中では、ひとりの住人が「夏は涼しくて、冬はあたたかい」と言ってただけのかやぶき屋根の利点(僕はここがこのドキュメンタリー映画ではよくわからなかった)を、「夏は涼しいけど、冬はあったかくないですよ。ただ、囲炉裏のある生活には(天井の高く、通気性のいい)かやぶきはいい。それともうひとつ、雪国では、かやぶきの屋根だと、雪が一気にどさっと落ちてこない」と、関野さんが映画外で、その利点を説明してくれてやっと合点。で、かやぶき家の保存の動きを、「屋根だけ残してもしょうがない。どうしてそういうスタイルにしたかという全体が大事」と喝破します。
関野さんが20年近く通っていたアマゾンでは、「パルメイラ」(だと思います。聞き取りなので不確か)という、「これで屋根を作ってくださいという感じで生えてる」植物で屋根を作るそうです。これを使って家の屋根を作るのは一人の男性が二日あればできてしまうぐらい簡単。ただ、パルメイラは点在して植生してるので集めるのに共同作業が必要。アマゾンでは家にしても、半径10キロ以内の自生のものを使った地産地消な生活で、自然によって人は生かされてるけど、我々はそのことに気づかない。チベットやモンゴルではいまカップラーメンが流行ってるけど、彼らは食べたらその容器をそこらへんに投げ捨ててしまう。それは、彼らがこれまでに使っていたものは捨てればみんな土に還るものだったからだ。でも、プラスチックは土に還らない。オイルはいずれなくなる。そのときに原子力にすればいいかというと、これだけ地震がある国でそれは無理だ。屋根もかやぶきが見直されることになるかもしれない。雨水利用もそう。そうした昔の知恵を使うときに、共同作業が必要になってくる、という話をしていました。
関野さんは先週は九十九里浜で砂鉄で「たたら」(製鉄)をしていたそうです。炭焼きとか「たたら」とか古来の方法で、丸木からカヌーを作り、インドネシアから日本を目指す、海のルートでの新グレートジャーニーをまもなく始めるそうです。まったく凄い人です。 というわけで映画のことや、青原さとし監督のことはあんまり印象に残ってないです。ごめんなさい。
ただ、先週、偶然に京橋で石川直樹さんの写真展を観たのですが、そのタイトルが「VERNACULAR 世界の片隅から」。様式建築が為政者によるものだとしたら、この「VERNACULAR」とは、それぞれの土地の風土にあった建築。だから、巨大な岩に寄り添うように作られた家や、水上に建てられた建て床式の家、中には茅葺きの家もあり(たぶん日本)、それらは確かに美しいと思った。