KAIKOO meets REVOLUTION


朝、長野からの聖火リレーの中継をテレビで見てた。「何もなく終わるといいですね」と言いながら、何かが起こることを切に切に期待しているのがありありとわかる生中継。中継よりも、何が原因で世界が中国に抗議しているのかを報道すべきだろうが。僕らも知るべきだ。知りたいことを報道してほしい。
〈我々もまた彼らであり、彼らもまた我々である〉
中国内でのカルフール(フランス系スーパーマーケット)への不買運動なんてまったく意味がわからない。まったく意味がわからないけど、彼らもまた自分たちの聖火リレーがなぜ世界で非難されているのかわからないのでは。報道しようよ。隠すな。中国はチベットを弾圧するな。カルフールよりダルフールをなんとかしろよ。
善光寺の、犠牲者追悼は僕に「Quiet Anger」という言葉を思い出させた。きっと「Anger」という感情を持ってもいけない。本当は「慈悲」でなくてはいけないんだろうけど、悟りなんて開けそうにないぐらい雑念、妄想、問題のかたまりの僕には、彼らの姿は高潔すぎる。まぶしい。まさに知恵のある勇気。長野に行く機会があれば、絶対に善光寺は参拝したい。
午後3時ぐらいにKAIKOOに行った。
4月26日&27日 横浜ZAIM+横浜公園
KAIKOO meets REVOLUTION
横浜ZAIMというのは、日本大通り駅から歩いて数分のところにある旧・財務省を使った会場らしくてそれでネーミングが「ZAIM」だそうだ。外装が煉瓦の、4階建ての建物。この古いビルすべてが今日のフェスの会場。一階の入り口で、紙製のリストバンドをしてもらう。一昨年、サンフランシスコで行ったエコフェスでしてもらったのと同じリストバンドだ。紙だけど丈夫。一昨年は一ヶ月間そのままにしてシャワーとか浴びてたけど切れなかった。
4階建てだから、ステージも各階にひとつずつ、というわけではない。そこが豪華。一階(WHITE KNIGHTS Floorという名称)だけはバー・スペースとDJパフォーマンスのみだったけど、2階にはKINGとQUEENの2ステージ、3階にはBLACK EMPERORというステージ、4階にはHORSE Rord Floorというステージがあった。
で、財務省が入っていたということは各階にひとつだけの大部屋=ステージがあるのではなくて、小さな部屋もいくつかある。このフェスではそこにアートがある。チューリップの花びらが床にばらまかれていて、子どもたちが遊んでいる部屋(チューリップの花びらは球根に養分を送るためにわざと摘み取られたもの)、鎌倉農連市場の中の僕が大好きなパン屋「パラダイスアレイ」や、江ノ島前の「オッパーラ」の出店や、チベット六ヶ所村のための署名デスクや、地雷除去キャンペーンや、解説不能なアートだけの部屋や、階段の踊り場にタロット占いの机があったり、そこかしこに小さなバーがあったり、10歳ぐらいの女の子ふたりがバスケットにチューリップを入れて配り歩き……と、どこも侮れない。
「隙間」がないわけじゃない。むしろ、こんなとこにソファ置いてスペースつぶしちゃっていいの?って思うところで休めたり、何より一階以外は全部禁煙というのがいい。僕がライヴハウスやクラブに行かなくなったのは、年齢も年齢だろということもあるけど、ランナーにとっては北京の大気と、煙草の煙が充満した密閉空間は大の苦手だからだ。
それに、地下で黒塗りの壁で、という空間ではないということも大きい。しつこいようだけど元はオフィスビルなのでちゃんとライヴ空間にも窓があり、小雨が降る横浜の街が見える。だから天井が低くても閉塞感はない。トイレや食べ物ブースの表示グラフィックや、それぞれの部屋に描かれたステージのネーミングに合ったペインティング、フライヤやポスター、フラッグと、すべてにオリジナルのセンスがあるのに驚かされる。そして集まった人たち。自分の意思で選択し、この場に集まり、邂逅した人たち。職業アンケートとかとったら、用意した選択肢以外のものがたくさん出てきそう。たぶん「アーティスト」が多いんだろうけど。
とにかく、侮れないアドレナリンが充ち満ちた場で、僕はYOUR SONG IS GOOD(ぎゅーぎゅーだったのでわりとすぐ退出した)→TUCKER→KENJI TAKIMI→東田トモヒロ→Likkle MaiKEISONDJ BAKUという流れでライヴを見た。TUCKERのフロアで出会ったはーぴーと、しつこくもいとうせいこうの話をしたり、このフェスの最高っぷりを話す。
サイトからタイムテーブルを見てもらえばわかるけど、肝心のパフォーマーも、アンダーグラウンドとかインディーとかアヴァンギャルドだけではないラインナップというのがいいです。これで前売り3500円て安すぎない? 東田トモヒロ(初めて観た)からLikkle MaiKEISONというアコースティックなサウンドが続いたフロアには椅子があったから、聴きながらダラダラといることが多かったけど、「共通言語です」(東田)といいながら、示し合わせたかのように、それぞれがボブ・マーリィを途中で一曲ずつカヴァーしていたのが面白かった。東田トモヒロが「NO WOMAN NO CRY」で、Likkle Maiが「ONE LOVE」で、KEISONが「WAITING IN VAIN」を一節と「JAMMING」だと思います。
で、大トリはDJ BAKU。「KAIKOO」のキーパーソンといえばこの人。
たぶんいちばん集客力のある2階のKING ROOMも満員。最初にフロアを震わせたのがいとうせいこうの、〈『善のネーション』、応答せよ〉というフレーズだったから、それはもうその瞬間から狂喜乱舞です。新作『DHARMA DANCE』の中の曲中心だったと思うけど(買ってから一週間ぐらいこのアルバムばかりリピートしてる。それもいとうせいこうがフィーチャリングされた「DHARMA」という曲ばかり)、当たり前なんだろうけどCD音源とは違って、フロア用にすべてその場でミックスされていく。「このリズムに身をまかせる人間がいてもよいのではないか」なんて思いながら。ウソ、何も考えずにただ踊った。踊らずにはいられないという衝動。
最後に、僕をこのイベントに向かわせたのは、サイトにあった「KAIKOO」の宣言文です。本当に来てよかった!