チリの学園バカ映画『落第』

赤坂区民ホールで“東京国際映画祭”のプレイベント、コンペティション傑作選上映ということで、チリの映画『落第』を観てきました。
落第(ニコラス・ロペス監督/2005年)
http://www.walkerplus.com/movie/special/tiff2005/detail029.html
上映前にロペス監督からのメッセージが流れた。若い! たぶんいま23歳だ。「ガールフレンドのいない、オタクでマンガ好きでデブな僕のような、君みたいな人たちのための映画」って言ってた。まあ、ほんとその通りの、オタクが主人公の、高校を舞台にした学園バカ映画。で、これはたぶんロペス監督の妄想を作品にしたもの。
主人公ロベルトはマンガ好きな「デブ・キモ・マン」で、下ネタしか言わないバナナマン日村に似た風貌の男と、「フォレスト・ガンプであることが判明した」巨体な鈍いやつといつも一緒にいる。この3人はクラスのいじめられっこなんだけど、主人公ロベルトが、スペインから転校してきた美少女クリスティーナに無謀な恋をすることから、学園生活は変わって、……いや、変わらない。3人は相変わらずクラスでいじめられるし、クリスティーナは隣のクラスのプレイボーイに口説かれてしまう。ロベルトは徹底してダメである。泥酔したロベルトが(ロベルトはこのとき「太った人間のみにくさ」と日本語で描かれたTシャツを着てる!)ゲロを吐きながら彼女に告白するシーンなんて最悪である。でも、告白するんだよ!
同じ高校を舞台にした(そしていじめられっ子が主人公の)『エレファント』(ガス・ヴァン・サント監督)とは大違いのみっともなさ(でも、ロベルトは銃を乱射しない)。南米チリの風景の描写だとか(『モーターサイクルダイアリーズ』!)、チリの政権(よく知らないけど)への批判なんてものはない。でも、だからこそ、こういうのは世界共通のストーリーなんだと思った。
昔、『グローイング・アップ』イスラエル映画だと知ったときも驚いたけど(だって『アメリカン・グラフティ』の続きみたいな気持ちで観たもん)、この『落第』だってそれが南米チリで撮られたなんてことは全然わかんない。ロベルトの住宅街は『ドーン・オブ・ザ・デッド』オープニングの場所(カリフォルニア?)みたいだし、たぶん世界中の人が知ってるような映画からの引用がいくつも出てくる(←失笑するレベル)。タランティーノみうらじゅんが好きな人はお勧め。何の得もないけど、遠いチリが近くに感じられました。