「文化人類学解放講座」

ヤコペッティの世界残酷物語<ノーカット完全版> [DVD]文化人類学解放講座」に行ってきました。今シーズン初。もうとっくに今年度の授業は始まっていたのに、出遅れていました。
今日はイタリアの映画監督ヤコペッティによる『世界残酷物語』という映画が教材でした。子どもの頃にこの映画を観て「どよーん」となった記憶があったのと、その後、どういうわけか植え付けられた、「こういうタイトルの映画はグロ映像の寄せ集めだぞ」という偽記憶で、出席するのをためらっていたのですが、行ってよかった。
文化人類学に必要な、「文化相対主義」を理解するのにもってこいの、まさに年度頭に観るにはいい教材だと思いました。すごくよくできてる。「文明」的なシーンと「非文明」的なシーンの繋ぎが、きっちりテンポを合わすDJのように、韻を踏み外さないラッパーのように、スムーズにミックスされていて、「未開」の「野蛮」な人たちだけが残酷な風習を持っているのではない、ということがよおくわかる。
ヨーロッパでも(監督はイタリア人)、アメリカでも、ニューギニアでも、台北でも、東京でも、視点を変えれば「残酷」に見える行為がある。何が残酷なのか、それを自分の価値観で判断するのは、非常に難しい。非難した自分も同じように、何か残酷であり滑稽なことをしているだろう。イルコモンズさんの解説で深く納得したのは、文化人類学者なら(誰でもそうかもしれないけど)、異文化を研究、紹介するにあたって、普通なら「伝統」的なことに注目するだろうところを、ヤコペッティ監督は外してくる、という指摘。東京のシーンなんてまさにそうだった。僕が思うに、彼は人間の差異ではなく、どの世界でも共通しているところを撮って編集しているんだろうな。
追記 思い出した言葉。
〈たった一つの「真実」という漢字に、馬鹿らしいほどたくさんのルビを振り続けよ!〉(いとうせいこう『解体屋外伝』)