「地球の歩き方」の歩き方

「地球の歩き方」の歩き方

創刊メンバー4人へのインタビューによって、ガイドブック『地球の歩き方』の歴史が描かれた本。
読み始めてすぐ、「あー、これは僕も取材したかったなー」なんて、ずいぶんと勝手なことを思ったけど、最終章でこの本の企画が『歩き方』創刊メンバーから出たものだと知って(つまり著者に、自分たちの「社史」の取材を依頼した)、驚きましたし、こういう発想力が「らしいな」と思えた。就職情報誌の発行をメインとする出版社は、学生相手の語学研修旅行の延長から、「自由旅行」(1974年)という新しい旅のスタイルを商品として売り出し、そこから『地球の歩き方』というガイドブックを生み出した(最初はツアー参加者への無料配布だった)。
1970年代以降の日本人の海外旅行史としても読めます。小田実の『何でも見てやろう』(1961年)があった。1964年に海外旅行の自由化。1979年、『地球の歩き方』創刊。1984年、『AB-ROAD』創刊。1986年、沢木耕太郎深夜特急』第一便、二便発行、蔵前仁一『ゴーゴーインド』発行、1996年、猿岩石ブーム。『地球の歩き方』は、それまでのパック旅行以外の旅の仕方を、パスポートを自分で取得できるということから提案した。
僕が初めて海外を旅した1985年もこのガイドブック(アメリカ編)を持っていったし、次のインドへの旅にも持っていったし、その後もずいぶんお世話になりました。
『歩き方』によって旅が依存化、画一化したという批判もありますが、前も書いたけど、僕はガイドブック持参の旅を否定しません。できない。でも、ルートから離れて、放り投げられて、旅の中で「アクシデンタルツーリスト」になってしまったときの不安な気持ちというか、ある種のあきらめ感すら(「ほら、やっぱり道に迷った!」)漂う時間も、好きです。