強風ハーフマラソン

会場最寄りの駅を出ると、駅前は見事に何もなかった。
商店街はおろか、コンビニも、サラ金の入ったビルも、マクドナルドも、なんもない。ボリビアサンタクルスの空港を一歩出たときの光景を思い出すほどのすがすがしさ。駅前で野球ができる。でも今日の風の中でやるなら、野球より凧揚げだ。
駅から歩いて15分、初めて訪れるその町の市役所が受付会場になっていて、そこでゼッケンを受け取る。寒いので今日は長袖のシャツを着て走ることにする。凧揚げではなく、こんな風の強い日に、僕はハーフマラソンの大会に出場したのだ。
追い風ならそれでもうれしいけど、主に横風で、ときおり向かい風。追い風はほんのわずか、彩りあつかいぐらいの、強風の中でのレース。最初に横風を受けたときに、シャツの胸にピンで留めていたゼッケンの一カ所が破れてしまった。左右が田んぼの中の道を走ってたときの横風は、まっすぐ走れないぐらい強烈だった。同じ県内を走る埼京線が、「強風のため運転見合わせ」となる天気だったのだ。
今回、コース上の距離表示が5キロごとだったので、1キロごとのラップはチェックできず(これはこれで自分の体調にあわせて走ればいいのだから問題はない)。風の影響でタイムは遅いだろうなと思っていたのに、5キロ地点で腕時計を見ると22分台。10キロでは44分台と、先月の千葉でのレースよりも速い。さえない走りの割りには悪くない。なぜ、「さえない走り」になったのかというと、風のこともあるけど、付いていく集団もなく(常に流動的だった)、レース中に自分で勝手に設定するペースランナーも見つからず、だからレースのかけひきもないいし、トラブルもない。こういう(自分内)膠着状態のときは、自分からペースを変えて記録更新にチャレンジすればいいのだろうけど、そこに立ちはだかるのが風だ。
それでも崩れることはなく、「残り5キロ」の表示を見てからは、わずかながらペースアップをして、ハーフの自己最高記録をちょこっと更新して1時間34分59秒のタイムを出せたので(会心のレースだった先月の千葉よりも速い!)、僕は速くなっているのかもしれない。もう少し速く走れる気がしてきた。