高野寛デビュー20周年記念ライヴ

セットリストには載っていなかった予定外のダブルアンコールに、20年前のデビュー曲「See You Again」をひとりでギターを弾き、歌ったあとも、高野さんはステージを去らずに、鳴り止まない会場の拍手を聞いていた。その笑みは僕がいた二階席からもはっきり見えた。一瞬、ステージ袖に向かうも、方向を変えマイクスタンドに近寄り「帰りたくなくなっちゃった、いま」とつぶやいた。それまで以上の拍手が湧く、当然!
ふたたびギターを取り、歌いだした曲は「500マイル」。これが本当に今夜のラストソングとなった。
高野寛さんのデビュー20周年記念ライヴを観にSHIBUYA-AXに行ってきました。
ステージ上は「W」を上下さかさまにしたフォーメーション。向かって右からベース鈴木正人、ドラムス宮川剛、ギター&ボーカル高野寛、キーボード斎藤哲也、コーラス有里知花。序盤はこのバンドでニューアルバム『Rainbow Magic』の曲中心。三曲目の「道標」で涙ぐんでしまった、僕が。これ、どうしたって清志郎のことを歌ったように聴こえるもん。RCサクセションの歌詞の一部が入ってるし。清志郎との共作「今日の僕は」も歌う。
新譜の中の曲は、シングルの「Black & White」をはじめ、「喪失感」を強くもっている曲も多いのに、なぜこんなにも美しく滑らかに聴こえるのだろう。モノクロームな現実から、カラフルな虹の都へ。とってもいいライヴだった。また、インタビューしたいなあ。
おまけ。
今日読んでいた『ランナーズ』という雑誌、2009年8月号から。
〈5月2日(中略)、ホリーの町を過ぎてしばらくすると長かったコロラド州に別れを告げてカンザス州に入った! 州境を示すボードサインの前で(間)寛平さんは両手を挙げてガッツポーズ。「ヤッター、カンザスやあー、遂にきたでえ!」と、そのときスタッフの携帯が鳴った。寛平さんに奥さんからの電話だ。暫く話していた寛平さんが突然大きな声を上げて泣き出した。半端じゃあない。号泣。その場に崩れて立ち上がろうとしない。忌野清志郎さんの訃報だった。
昨年12月、大阪吉本を出発するときも清志郎さんの応援で出発し、「かんぺいアースマラソン」の応援歌も創ってもらうほど親しくしていた友人だ。寛ちゃん、寛ちゃんと呼ばれ、コンサート会場でもセッションするほどの仲だったから……。
暫く泣いた寛平さんだったが、悲しみを振り切るように「清志郎さん、今は行けへんけどゴールすることでお返しするしかないから……一番応援してくれてたから、行くワ……」とこの日の残り18キロをまったくの無言で、走りで気持ちを伝えるかのようにしっかりと走りきったのである。(後略)
坂本雄次「アースマラソンサポート日記」〉