シンポジウム「メディアを変えれば世界が変わる」

tuktukcafe062009-02-22

広尾にあるJICA地球ひろば講堂で行われた、A SEED JAPAN主催のシンポジウム「メディアを変えれば世界が変わる」に行ってきました。講師は、出演順に柴山哲也氏、マエキタミヤコさん、鎌仲ひとみさん。
以下は僕の記憶による要約。発言等に事実誤認があったら僕のミスですので、ご指摘して頂ければ訂正します。
最初の基調講演が、元朝日新聞記者、「朝日ジャーナル」編集部を経て、いまは現代メディア・フォーラム代表という柴山さんが「マスメディアの社会的責任」というテーマで約1時間話しました。マスメディアの本来の役割は、ということから、日本のマスメディアの閉鎖性(「記者クラブ」制度の存在等)や問題点(横並び報道等)などをあげて、マスメディアを変えるには、受け手が無関心では変わっていかない、ということと、小学校からメディア・リテラシー、情報の真偽を見極めることの大切さを教えていくことが必要、教育の中でジャーナリズムを取り戻すということが大事と話しました。日本と海外とのマスメディアの比較で、印象的だったのがイギリスの公共放送BBCが、ブレア政権下でイラク大量破壊兵器があるという情報がねつ造されていったことを明らかにしていった件をあげて、公共放送でも政権に屈しない姿勢を称賛していました。対して日本は、中川前大臣のあのもうろう記者会見を例に出して、記者同士のなれ合いがあるからああいった会見でもその場で直接、大臣にあの状態を問う記者がいなかった。外国の報道機関がとりあげたことで、日本でもあの記者会見が問題になったと、記者クラブ制度を批判しました。
最後に、blogなどインターネットを使った市民メディアもできてきたけど、ジャーナリズムはボランティアではできない、全生活を投入しなくてはいけないから、blogなどの新メディアは広告収入や課金など生計を立てる方法を作っていかなければならないのが現時点での問題点である、というようなことを話しました。
続いて登場のマエキタミヤコさん。最初から、「半農×半ジャーナリズム」もかっこいいんじゃないですか、と柔らかに切り込んでいきます。生計がかかってない分、何も気にせずに言えるから、というわけで。マエキタさんは「権威とアートの求心力」というテーマを出してきたのですが、マスメディアが変わるのを待つよりも自分たちが変わるほうが速いと、また鋭く刺激的な観点からの講義を始めてくれたのです。
情報はタテ系とヨコ系があって、タテは強いけど、ヨコに伝えることが大事なんだと。「知る」だけじゃだめ。自分が知ったことで安心して、人に伝えることには躊躇してしまう、それは偉そうに思われる、傷つけるのが怖いからと。その結果(情報を自分で止めてしまうことで)、市民のネットワークがうまくいかない。だから、自分が知ったことはもったいつけずに、さっと渡してあげればいい、というのです。
まず、興味は惹くことができる。知らないことは知らせることができる。「無関心層」というのは幻想である。「無関心層」は常にねつ造されている。で、この構造を変えることができるのはアートであると。送り手と受け手が対等であると、意見も多様性になる。多様性はめんどくさいし、時間もかかる。だけど、異論を封殺したり排他的にならずに、この手間を省かない。そして多様性の寛容→「民主主義」ができあがる、と説きます。
人は知った瞬間に知らなかったときのことを忘れてしまう。だから情報を知りつつ知らない人の立場にたって、その間を取り持つ人が必要と言ってました。マエキタさんのプレゼンテーションって、劇的に明快。
鎌仲ひとみさんは、ドキュメンタリー映画『六ヶ所村ラプソディー』での撮影取材を通じて体験した、マスメディアの問題点、特に記者クラブ制度を批判していました。でも、残念ながら時間が足りなかった。
そしてその足りなくなってしまった時間が何に使われてしまったかというと最後のパネルディスカッションのパート。ここには雑誌『オルタナ』編集長(似た名前の雑誌『オルタ』ではない)の森さんという方も加わって、A SEED JAPANの人が司会で、「マスメディアのCSR(社会的責任)」というテーマで進行したのだけど、まずマスメディアというのがテレビ局という限定されたものであり、いきなりCSRといわれても抽象的だしで、議論が噛み合わずに時間がもったいなかったです。せめて、「イスラエル報道におけるマスメディアの社会的責任」といったように具体例を出してのディスカッションならよかったのに。パネルディスカッション前の休憩時間中に『DAYS JAPAN』の表紙がたくさんスクリーンに映し出されていたからきっとそういう話しになるかと思ってた。これなら、マエキタさん(20分間しかなかった!)と鎌仲さんの話をもっと聞きたかったです。テレビ局のことよりも、マエキタさんが話していた自分たちでできる映像メディアyoutubeの可能性についてもっと話してほしかった!