遠い太鼓に誘われて

遠い太鼓に誘われて僕は今日短い旅に出ました。昨日、東京から帰省して今日は実家でのびのびするぞと思っていたのに、ガンジーさんに〈あなたのおこなう行動が、ほとんど無意味だとしても、それでもあなたは、それをやらなければなりません。それは世界を変えるためにではなく、あなたが世界によって変えられないようにするためにです。〉なんてことを言われたら、何かするしかないじゃないですか。
僕が朝、「ちょっと東京のイスラエル大使館まで抗議しに行ってきます」と母親に話すと、母は「これを持っていきなさい」と、おにぎりを作ってくれました。あまりお金がなくて、時間だけはある僕は、新幹線ではなくて海沿いの線路を鈍行列車を乗り継いで東京に向かいました。おにぎりはその車中で、海を眺めながら食べました。
東京・麹町のイスラエル大使館の前に集まった人たちは、空爆をやめるようにいろんなスピーチをしました。空爆されているガザという地区は佐世保市ぐらいの面積で、そこに150万人のパレスチナの人たちが住んでいるそうです。イスラエル軍はそのガザを封鎖して、空から爆弾を落としています。最初の空爆は、12月27日、ちょうど終業式が終わって子どもたちが帰宅する時間で、子どもたちも死傷しています。
イスラエル大使館の前には、夕方になると、日本人だけじゃなくさまざまな国の人たちもやってきて、それぞれキャンドルを灯し、空爆に抗議し、犠牲者のために祈りました。ガンジーさんの言葉を僕に教えてくれたイルコモンズさんのblogに、今日の写真とイスラエル大使館に申し入れた文書が載っています。
せっかく東京まで来たので、渋谷公会堂で行なわれていたGANGA ZUMBAのコンサートをちょっとだけ観に行きました。クラウディアがとてもかわいかったけど、帰りの時間があるので途中で退出しました。帰りも鈍行列車の乗り継ぎ、往復8時間の日帰り旅行でした。
僕はこれから歯を磨いて眠ります。ガザの人たちにも安心して眠れる日が一日でも早く来ますように。おやすみなさい。上の写真は、2年前に僕がサンフランシスコで撮ったガンジーさんです。 ■ [資料] 今日、イスラエル大使館に申し入れた文書
ニシム・ベンシトリット駐日イスラエル大使殿
本日私たちは、イスラエルがこの3日間に渡って続けている、ガザに対する軍事行動に抗議するためにここに集まりました。
報道によれば、本日12月30日早朝までに、イスラエルによる空爆パレスチナ人345人が死亡し、1450人が負傷しています。あちこちに死体がころがり、四方で火の手が挙がっていても、狭い、たった360平方キロの土地には逃げる場所さえない。ガザの150万の住民すべてが猛烈な爆弾の炸裂音と閃光のなか、死の恐怖と家族や友人を失った悲しみのどん底にいます。どこにも出口がないたった360平方キロの土地のなかで寒さと飢えに苦しみながら、ひしめくように暮らしてきた150万人の人々の上に、あなた方の軍隊は爆弾を落とし続けているのです。
あなたは日本のマスコミに対し、この攻撃は正しい、ハマースによるロケット弾攻撃には、我慢の限界を超えていた、とコメントしています。しかしそもそも、なぜハマースが、ほとんど何の効果もないロケット弾を発射するような事態に至ったのか、よく考えてみてください。ガザには、他でもないあなたがたの国の建国のためにその地を追われたパレスチナ難民が、押し込まれるようにして暮らしていた。そこをイスラエルが、1967年の戦争によって占領したのです。
あなたがたの国は40年あまりに渡ってガザ占領を続け、抵抗する子どもや若者を逮捕し、拷問で手足を折り、家族や関係者の住む家屋をブルトーザーで破壊するといった支配を続けてきました。こうしたイスラエルの惨く非人間的な支配のなかでこそ、ハマースはパレスチナ民衆の支持を得て成長したのです。ハマースの武装作戦には、パレスチナ人の中においても賛否両論があります。しかしまず、あなたがたの国が行ってきた占領こそが、現在に至るすべての問題の元凶だということを正しく認識してください。2005年、ガザ内部の入植地からは撤退しましたが、イスラエルパレスチナ全土を占領状態に置き、ガザの境界における人の出入りをすべてコントロールすることは何ら変わりませんでした。ハマース政権の成立以後は封鎖を強化して人の出入りを禁じ、ガザ住民が衛生な水も電気もない劣悪な環境下で生きることを強い、その生殺与奪を握ってきました。民主的に選ばれた政権を世界から孤立化させ、パレスチナ人の未来への希望を奪い続けてきたあなたがたが被害者ぶるのは、厚顔無恥にもほどがあります。
冷静に比較してみてください。あなた方の国は、違法に占領している東エルサレムゴラン高原を除いても、ガザの56倍の大きさがあります。あなた方の国は人口600万人にして16万人の兵力をかかえ、さらに40万人の予備役兵さえもっています。ほとんどが人口希薄な地域に落下して終わったハマースのロケット弾がイスラエル市民の生活にとって本当に脅威だったとしても、150万人の住民すべての上に爆弾を降り注ぐような軍事作戦は、いかなる意味でも正当化されるべきものではありません。
アメリカやイギリスの政治指導者が、自分たちの利益のためにあなたがたの行動に理解を示したからと言って、世界各地の民衆は、イスラエルの行動を決して許しません。今すぐ空爆を止め、地上戦への準備を中止してください。そしてパレスチナ人の人権を奪い続ける現在の政策を改め、入植地を撤去し、パレスチナ人と対等に共存してゆく姿勢を見せてください。
2008年12月30日
ガザ空爆に抗議する12.30緊急行動参加者一同