ブラジルと日本の大臣の違い

先々週、横浜で観たジルベルト・ジル。
60年代末には盟友カエターノ・ヴェローゾと共に当時のブラジル軍政の弾圧に対抗して「トロピカリズモ」と呼ばれる運動を起こし、その政権の弾圧によってイギリスへの亡命を余儀なくされた。
ミュージシャンとしても高名だけど、今世紀に入り、ジルベルト・ジルはブラジルの文化大臣に就任(この夏まで務めた)。しかし、先日の横浜でのライヴでは、シェイプアップされた身体で、サンバやボサノヴァをロック、レゲエとミクスチャーした独自のサウンドで演奏し、とても66歳とは思えないパフォーマンスで観客を魅了した。元・政治家の余技なんかじゃない。バリバリの現役ミュージシャン。ボブ・マーリィの「No woman, no cry」をカヴァーする「元・大臣」なんて日本にいるかい?
彼のインタビュー記事が今朝の朝日新聞に載ってました。記事のタイトルは「ネット世界を音楽で表現 本格復帰のジルベルト・ジル」。
文化大臣時代の6年間は、〈「開かれた国をつくるために、国民が情報に寛く自由にアクセスできる環境をつくることを重視してきた〉という。インターネット網の整備と、デジタルメディアを通じた文化活動への支援。この夏発表された11年ぶりのアルバムはブロードバンドがテーマ。
〈「人間社会はメッセージの受発信、すなわちコミュニケーションで成り立つ。その可能性を飛躍的に発展させたのがブロードバンド技術。私は音楽を通じてメッセージを受信している」
日本でのライブも撮影、録音自由で、個人のサイトで紹介されている。「ブロードバンド時代とは、個人が新聞やテレビなどの既存のメディアに成り代われるということ。一人ひとりがジャーナリストで、編集者でもある。民主主義の観点からも重要だ。サイバースペースは伸縮自在だしね。〉(朝日新聞 2008年9月27日より)
  さすが、軍事政権による表現の弾圧に、「禁止することを禁止する」と歌で対抗したトロピカリズモ運動の旗手たちは違う。もういちど繰り返すけど、彼、ジルベルト・ジルはこの夏までブラジルの文化大臣でもあったんだよ。
翻って、日本の大臣の「失言」という名の本音……。新たな大臣が就任するたびに自分は権力側にいるという意識からの発言を連発する。こんな政権は「民主主義の観点から」全然重要じゃない!