パンダはいいから

チベットを救え! チベット問題の平和的解決を求める大集会&デモ行進」に昨日参加してきました。正午から2時間、千駄ヶ谷日本青年館で集会。その後、青山、表参道経由で代々木野音までのデモ。
僕はチベット問題について知りたいことが多すぎるので、集会から参加しました。日本青年館、満員。会場に入りきれなかった人(あるいはデモから参加する人)を含めると4000人以上が集まったそうです。
この集会の司会を務めたモーリー・ロバートソンさんと池田有希子さんも、インターネットラジオ番組の取材で昨年チベットウイグルなどを旅し、そこで彼ら少数民族に対する中国政府からの弾圧を目にし、最初は政治的な発言をしていくことをためらっていたものの、事態が悪化する状況の中で発言していくことを決意したそうです。「私たちは自分でものごとを考えることができるんですから」というモーリー・ロバートソンさんの言葉は心を撃ちました。「今日はいろんな立場の人が発言します。それを聞いて自分で判断してください」と。
在日チベット人たちがステージに上がり(彼らがメディアの前に登場することには非常に大きな勇気がいることが容易に想像できる。だから僕は心からの拍手を贈った)、挨拶があり、まず、チベット弾圧で犠牲になった人たちへの1分間の黙祷を捧げる。
次に今回の集会&デモを主催した「SAVE TIBET NETWORK」の代表のスピーチがあり(重要なポイントは、アゲンスト=敵は中国ではなく、中国の一部の権力者である、ということ。ちなみに昨日来日した中国の胡錦濤主席は1989年にチベット自治区共産党書記になり、ラサに戒厳令を敷き、弾圧を推進したことで中国政府内での地位をのぼりつめた人だ。
スピーチは続く。ダラムサラからこの日のためにやって来たチベット亡命政府の議会議長、長野の僧侶、チベット問題を考える日本の議員連盟代表、アムネスティの日本代表、在日内モンゴル人の代表、在日ウイグル人の代表、在日台湾人の代表、天安門事件(僕にとって絶対に忘れられない衝撃的なテレビ映像というのは、1989年6月4日の天安門と2001年9月11日のマンハッタンだ)で日本へ亡命した中国人ジャーナリスト、伊勢から神道(!)の代表など。
英語あり、たどたどしい日本語もあり。でも、どれもが心を揺さぶる。「モンゴルは独立した国でしょう、と言われます。でも違います。あれはモンゴルの一部であり、内モンゴルは中国から独立を認められず弾圧を受けています」という言葉。僕は知らなかった。知らないことが多すぎる。でもそれは知っていけばいいとも思う。こうやって人に会い、教えを乞い、本を読み、自分の頭で考える。ミャンマー軍事政権を支持しているのは誰か、ダルフール紛争の黒幕は誰か(だから、先日の日記に「カルフールよりもダルフールをなんとかしろ」と書いた)。
最後のスピーカーは在日チベット人の代表。
「これだけたくさんの人たちが集まってくれて本当に感謝しています。でもそれは3月10日に、自分の命を賭して自由のために立ち上がった人たちがいるからです……」。「聖火リレーは中国対チベットのデモ合戦のようになってしまいましたが、中国のみなさんはデモそのものを気にするよりも、その裏にある真実から目をそむけないでいただきたいと思います」。
10数人の在日チベット人たちが一緒に壇上にあがり、そのラサでのデモで歌われた歌を歌った。「ロンショー」というチベット語から始まる。「ロンショー」の意味は「rise up!」。虐げられてきた人たちが自由のために立ち上がるために、自分たちを奮い立たせる歌。
僕は「応答」する。これはチベットだけでも、内モンゴルウイグルやだ東トルキスタンなどの中国内だけでの問題でもない。世界に、自分に繋がる問題。〈我々もまた彼らである 彼らはまた我々である〉いとうせいこうのこの言葉を、今月いったい何度、僕は実感しただろう。正確に言えば、僕にはまだ「我々」という複数形を使う資格(「資格」としたけど、ここうまい言葉が見つからなかった)があるとは思えないけど。
モーリー・ロバートソン池田有希子さんが、デモの説明に移る。そうか、整列して何組かに分かれて先頭が横断幕を持つというのは、交差点を通過する際に警官に誘導してもらうための目安になるからなのかと、これまでに何度もデモに参加してるのに初めて知った。
ふたりが交互に叫んだ。「FREE TIBET!」。僕らはそれに応える。「フリー・内モンゴル」、「フリー・ウイグル」、「フリー・チャイナ」、「フリー・ジャパン」、「フリー・あなたと私」。途中で泣き崩れてしまったモーリー・ロバートソンに、みんなから応援の声と拍手が沸き上がった。これが日本青年館での集会。
日本青年館を出て、デモから参加のはーぴーと落ち合った。
「パンダはいいから チベットに自由を FREE TIBET
というのがはーぴーが作ったプラカード。最初にパンダ云々のアイデアを出したのは僕だったけど、それをうまく整理した言葉選びのセンス、チベットの国旗カラーを使ったデザインが素晴らしい。
もう一種類、パンダ版と表裏になるパターンのコピーは、
「ちゃんと対話せよ! FREE TIBET
これはダライ・ラマ法王の「対話」を重んじる姿勢(集会でも「非暴力・対話・慈悲の心」というダライ・ラマ法王のそれは何度も強調されてた)と、それから先日のいとうせいこうポエトリーリーディングを取り入れ、さらに人気取りの、ポーズだけの対話じゃなくて「ちゃんと」と入れたところがすごい。僕が「解体屋外伝」の錠前屋(プロテクター)だったら、「今日から、この方をマスターと呼ぼう」と言ってはーぴーに素直に頭を下げるね。
そのはーぴーの日記に、このプラカードや、チベット国旗が数多く舞う写真やレポートが載っているのでどうぞ。
とにかく、日本青年館に入りきれなかった、デモに参加しようとする人の数、そしてチベット国旗の数に驚いた。青山、表参道を経由して代々木公園までのパレード。シュプレヒコールはあんまり好きじゃないけど、このデモを先頭でリードしているのは在日チベットの人たちだ。だから自分の想いを込めて従う。彼らの勇気に敬意を。彼らの地に平和を。
パレードの終着点、代々木野音はさらにすごいチベット国旗の数だった。新たなパレードが到着するたびに「FREE TIBET!」のコールと、拍手で迎える。パレードが全部集結し、再び在日チベット人たちがステージに上がり、最後にチベット国家を歌った。
下の映像ではリミックスされてるけど、この歌です(たぶん! 違ってたらごめんなさい)。