『ダーウィンの悪夢』

渋谷で『ダーウィンの悪夢』というドキュメンタリー映画を観てきました。
アフリカ・タンザニアにある世界第二位の大きさの淡水湖ヴィクトリア湖に、誰かがもともとその湖には住んでいなかった肉食魚ナイルパーチを放った。ナイルパーチは湖に住んでいた生物を食べ、増える。湖の生態系は激変する。ナイルパーチの身は白身フライの材料としてヨーロッパや日本に輸出される。加工工場が湖畔にでき、雇用が生まれる。巨大な輸送機がそれらをヨーロッパに運ぶ。
タンザニアに飢餓が発生したとニュースは伝える。だが、タンザニアの人たちはナイルパーチの身は高価すぎて買うことができない。経済格差。ストリートチルドレンや売春、暴力、エイズの問題……。ヨーロッパから飛んでくる輸送機はアフリカの紛争地に武器を運んでくるらしい。アフリカの子どもたちには武器を、ヨーロッパの子どもたちには食べ物を、という自嘲的な証言がこの映画の中にある。
いま読みかけの米原万里さんの『打ちのめされるようなすごい本』という書評本からの孫引きになるけど、「グローバル化した巨大食品産業の戦略は、(1)世界でもっとも安いところから原料を調達し、(2)労賃の安いところで加工し、(3)世界中に発送する、である」(山下惣一『安ければ、それでいいのか!?』)ということで、この図式は、タンザニアのこの状況にまんま見ることができる。では、それがどんな影響を及ぼすのか。
フランスではこの映画の影響でナイルパーチのボイコット運動が起こったそうです。でも、監督がインタビュー(僕は映画を観たあとに公式サイトで読んだ)で強調しているように、「この映画は魚についての映画ではなく、人間についての映画」であり、「東京でスーパーマーケットにおいてある、どんな製品を見ても、バナナでも魚でも肉でもみな同じような物語があり、破壊的な出来事がその裏にはある」ということ。そして「それを見る目を持っているかどうかが問題」と、監督は訴えます。
なお、Shing02DJ KRUSHも参加しているAFRICAN JAGというプロジェクトの公式サイトで、『ダーウィンの悪夢』にも出てくるアフリカにおけるエイズや少年兵の問題がわかりやすくレポートされています。僕もまた読んでみます。