「友部正人と峯田和伸」

下北沢「風知空知」での弾き語りコンサート「友部正人峯田和伸」に行ってきました。と、この日記を書いているのは12月7日。いろんなことを忘れてしまった。
ふだんはライヴハウスではない場、キャパ50のライヴなのでチケットはきっと争奪戦だったのだろうけど、11月18日に世田谷文学館での友部さんのイベントで「友部正人峯田和伸」チケットの限定販売もあって、僕はそこで購入できました。3500円。そうだ、そのイベントのことも記録してなかった。
「宮沢和史の世界」関連イベントの最終回。友部さんプロデュースのミュージシャンによる朗読会ということで、文学館で友部正人三宅伸治寺岡呼人出演の「LIVE! no media」が開かれました。友部→三宅→寺岡の順でひとりずつ、約20分ぐらいの朗読+弾き語り数曲。印象に残ってるのは実は朗読ではなく、友部さんの「感動したいときにどんな映画を観に行きますかと訊かれて考えたんだけど、感動したくて映画を観に行ったことなんてないんだよね」という言葉。僕も同じ! 前にある雑誌の特集で「泣ける映画」というのがあったけど、それも僕にはよくわからない。僕は映画を観て泣かないんです、ということではなくて、みんな雑誌に教えてもらってまで泣きたいの?という疑問。でも、「笑える映画」という特集だったらやっぱりチェックするかも。
最後に宮沢和史も登場した。友部さんと宮沢との関係は極東ラジオ第342回のレポートにまとめています。宮沢は最初に友部さんの「アクシデンタル・ツーリスト」を朗読し、友部さんの魅力をバス停でバスを待ってる何も起こらない時間をこんな詩にできる、「無」を描けるところだという話をした。それから高田渡さんの文章を引きながら、友部さんの歌の中の主人公たちの魅力について話した。「すばらしい日々」を弾き語りし、友部さんと一緒に友部さんの「こわれてしまった一日」を歌った。
友部さんの日記にこの日のイベントのことが書かれていて、そこには「宮沢和史の世界」(展示)について、〈終了後、閉館の時刻まで、展覧会を見せてもらいました。現在ニューヨークのモルガン・ライブラリーで開かれている「ボブ・ディランアメリカンジャーニー」という展覧会よりはずっと規模も大きく内容も豊富でした。〉とあって、とてもうれしかったです。実はこの展覧会の内容を考えるにあたって、いちばん最初に参考にしたのはボブ・ディランの「The Bob Dylan Scrapbook: 1956-1966」という本だったのです。
The Bob Dylan Scrapbook, 1956-1966

The Bob Dylan Scrapbook, 1956-1966

12月2日の「風知空知」に戻ります。といっても記憶がほとんど薄れてるけど。
ライヴは最初にふたりで友部さんの曲を2曲歌って、それから友部さんひとり。友部さんは「音程がはずれて間違えるから聴かないでほしい」と言ってから「銀河鉄道の夜」も歌った。そんなふうに言って歌うシンガーは友部さんの他にいないと思う。友部さんの歌の言葉はどんどん心に到達する。「Speak Japanese, American」なんてワンフレーズ、ワンフレーズが僕の中に堆積してくるようで、とても面白かった。もしかしたら子どもたちは親が語るおとぎ話なんかをこんなふうにクリアに(ぴったりくる形容が見つからないのだけど)受け止めてるのかなと思った。
少し休憩があって今度は峯田くん。峯田くんは歌を歌うたびにそのときつきあっていた彼女のことを思い出してるようだった。最後にまた友部さんとふたりで、この日のためにお互いの歌詞につけた曲を披露した。最初に峯田くんが作詞した「おかえりなさい」を友部さんが歌って、次が友部さんが作詞した「牛乳と菓子パン」を峯田くんが歌った。友部さんは峯田くんが作曲した「牛乳と菓子パン」を誉めていた。アンコールでは「人間」もふたりで歌われた。僕はこの曲、去年の11月に初めて聴いた。峯田くんの弾き語りを聴いたのもそのときが初めてだった。とてもいいイベントだったので、そのときの日記もついでにここに載せておきます。
The Sound of Shimokitazawa〜弾き語りの夕べ〜
今年最高のイベント! 渋谷O-EAST。行ってよかった。狂いそうになるほどよかった。
無戒秀徳アコースティック&エレクトリック
峯田和伸
海北大輔
曽我部恵一
の4人がこの順番でひとりずつ出演。
無戒秀徳の弾き語り初めて観た。あれ、ZAZENは観たことあるかもしれない。ナンバーガールは何度か観た。この人、観ると何故か松本大洋のマンガを思い出す。それも「鉄の味がする……」というセリフ。なんでだか(謎)。
オレンジのパーカーの上に黒いジャケットという暑苦しい格好で出てきて、ギターのループにラップを乗せるというか、無戒流、21世紀のトーキングブルーズ。最初からひきこまれました。でも、“野に咲く花のように〜”と歌う曲なんか、実はすごくいいメロディで(ハナレグミが歌えばすごく合いそう)、底知れぬ才能を感じるTHIS IS 無戒秀徳。フロアに降りて観客の女の子ふたり連れて上がって、声をサンプリングしたり、コーラスさせたりというのもすごく面白かった。また観たい。ぜひ観たい。
峯田和伸は今日、いちばん楽しみにしてた。僕は銀杏をきちんと観たことがない。CDも持ってないので、いま、GOING STEADYを聴いてる。銀杏を買っておくべきだった。すごく聴きたい。iTMSで「銀杏」で検索したら、デュークエイセスの「銀杏並木」ってのしか出てこなかったよ。映画『アイデン&ティティ』は観た。峯田和伸の存在にやられた。で、この前のRISING SUNをすごく楽しみにしていた。すごく後ろから観てたのだけど、音よりも峯田の表情が観たくなって(そんな「音」に感じたのです)テントを出て、テントの横にあったモニタスクリーンを観に行ったら、僕と同じことを考えていたのか、数百の人がスクリーンの前に集まり、映された峯田の顔を見ていた。音はもちろんあまりよく聴こえないけど、それで充分伝わってきた。うわ、僕は北海道から帰ってきてすぐ銀杏を買うべきだったのだ(フィッシュマンズの感動で忘れた)。そうだ、いま思いだしたけど、このRISINGでの峯田のMC(ROCK IN JAPAN FESでの全裸について)について、ある雑誌が僕が感じたこととまったく逆のことを書いていてビックリしたんだ。なんで同じ言葉を違う方向に受け取るんだろうって。
いきなりの「アカペラ」から始まった今日のステージのライブDVD欲しい。また観たい。最後に歌った「SOUND OF 下北沢」とか、新曲また聴きたい。
海北大輔LOST IN TIMEではベースなのに今日はアコギの弾き語り。こういう経験も積んでいるのだろうか。声が美しい。声の美しさはハナレグミ海北大輔だ。「勉強すればするほどこういう問題はわからなくなってくる」と誠実。わからなくなっても勉強することが大事だと思う。ほんとにいつ「あなたの住む町で同じことが起こるかもしれない」のだ。そんで僕はそういうときに揺るがない自分でありたい。海北くんがいつも歌う、あなたが幸せであるようにというのも揺るがない。美しく強い歌。
曽我部恵一はギターもマイクもなしでロックンロールだったよ。どこが「弾き語りの夕べ」なんだか。楽器担当スタッフの「トミー」君の奮闘が目立った。応援してた。彼だけスポーツしてるみたいだった。ギターの音が出なくなって、ドラム叩きながらの「テレフォンラブ」は笑った。すごい切実な「愛」。「LOVE-SICK」で終わったけど、アンコールの拍手をしていたら4人が出てきた! 無戒秀徳の乾杯の音頭。そして、無戒秀徳海北大輔が弾きだした曲は……、あの曲って『アイデン&ティティ』の中で歌われていた曲でしたっけ(「人間」でした)。会場中が大合唱になって、峯田がダイブして……楽しかったです。すごく楽しかった。行ってよかった。タクヤくんの前説を見逃したのだけ心残り。
帰りに渋谷駅前のTSUTAYAで『アイデン&ティティ』のDVD買った。