『ナージャの村』

ナージャの村 [DVD]

ナージャの村 [DVD]


昨日、友人からの突然の誘いで中央線に飛び乗り、国分寺の武蔵野美術大学(以下、ムサビ)に行ってきました。
ナージャの村』というドキュメンタリー映画を教室で上映するとのこと。チェルノブイリの近くのロシアの村を撮った映画、ということだけしか知らなかったけど、僕はこういう映画はうまくタイミングにのっからないと絶対に見逃すのです。
僕は社会派ドキュメンタリー映画が苦手です。『六ヶ所村ラプソディー』も『ホテル・ルワンダ』(ドキュメンタリーじゃない?)もまだ観ていません。テレビでも、「小学校で銃乱射事件」だとか「幼稚園児の列に車が……」なんてニュースが流れると見ているのがつらくてチャンネルを変えてしまうぐらいなので、楽しそうでない映画を自ら進んで行くなんてことは滅多にない。だから、昨日みたいな誘いは感謝。
ムサビは国分寺駅からバスに乗り換え、終点駅。ちょっと遠くて、着いたのは上映開始時間から40分が過ぎた時間。19時を過ぎてもう人が少なく明かりもほとんど消えたキャンパスを急ぎ足で歩く。僕はムサビの卒業生ではなく、それどころか大学というものに行ってないので6月に明治学院大学に行ったときもそうだったけど見るものすべてが新鮮。7号館401号教室へ。
映画は淡々としていた。ロシアの村人の日常、四季を淡々と映している。画面の中に強い色彩はない。看板もない。途中から観た僕にはそこがロシアの村ということしかわからない。ナレーションもほとんどない。じゃがいもを収穫する農夫、屋根を直すイワン(名前適当。覚えてないので)、学校へ行くナージャ(この小学生の女の子の名前が映画のタイトル)、おじいさんのお葬式があり(途中から観てるので死因がよくわからない)、おばあさんが「春になればライ麦やじゃがいもを植えて〜」ということを話している。
ラストシーンで「放射能により立ち入り禁止」という標識が出てきて、この村が放射能汚染された場所ということがわかるのだけど、それまで(僕が観た中では。最初の40分を見逃してるのだけど)チェルノブイリ原発事故の被害や、その汚染の悲惨さを描写するシーンはない。僕は外国の風景や人の生活を知るのが好きなので淡々と観ていた。
映画が終わって教室の明かりがついた。マイクを持って話し始めた男性が誰なのかすぐに気づいた。関野吉晴さんだ! なんとなくこれは『ナージャの村』の上映イベントだと思ってたんだけど、ムサビで文化人類学を教えている関野吉晴さんの授業だったんだ! 学生でない僕は恐縮するものの関野さんの授業を受けることができたというのが嬉しい。
関野さんがこの映画の背景を説明してくれた。舞台は1986年に大事故を起こしたチェルノブイリ原発に隣接するベラルーシの村。放射能汚染によりやはり立ち入り禁止区域になっている。映画に出ているのはそこに暮らす(!)村人たち。監督は写真家の本橋成一さん。映画は「放射能は怖い」というようなメッセージが強いものではない。ここでしか生きていけないという人もいるということを撮っている。
グレートジャーニーでロシアも旅した関野さんならではの話も聞けました。
南米とロシアの人の共通点(←おもしろかった)やロシアの廃村の話。関野さんもロシアで廃村をいくつも訪れたそうです。 そんな場所でも何人かは住んでいる。彼らはモスクワ近郊から、好待遇にひかれ辺境の地までやってきた。ところがソ連の崩壊で給料が出なくなる。まず役所がなくなる。学校がなくなり、郵便局、電話局がなくなって、人が去っていく。子どもの教育のことがあるので家族だけは帰すが自分が帰る金はない。そこで、年を取った男たちが何人か集まって共同生活をしているそうです。
授業が終わって関野さんに改めて「エセコミ38号」の宮沢和史との対談のお礼をする。
僕はあの取材でいろんなことを学んで、あれからいろんな出会いがあった。あの取材がなかったらこの「授業」に誘ってくれた友人(ムサビの卒業生)にも出会ってない。
駅までの道を一緒に帰った。2年前のムサビの学園祭に彼がShing02を呼んだこと。去年の学園祭には「緑黄色屋台」という菜食餃子と野菜スープの店を出し、これにはShing02アメリカから来日して彼の家に泊まり込み、一スタッフとして参加したことなど。六ヶ所村に行った話、奈良美智の金沢と弘前の展覧会の話などなど。楽しい夜だった! ありがとう!
いま調べたら『ナージャの村』については下記のページに詳しい解説が載っていました。
http://www.jca.apc.org/jcf/movie/m-guide.html