佐野元春×山口洋

昨日から配信されている佐野元春ポッドキャスティング<「music united」の第二回。ゲストは山口洋
山口洋は先月、「満月の夕」を含むヒートウェイヴのアルバムが音楽配信サイトから突然削除されたことを自分のサイトに書いたところ(→山口洋1月18日付け日記)、佐野元春から「応援している」という励ましのメールをもらって大変勇気づけられたという。
この番組、ふたりのトークの中で「encourage」という言葉が何度も出てくる。「勇気づける」という意味。
番組はまずヒートウェイヴニューアルバムプロジェクトについての話から。「このシステムはいちばん先鋭的だしモダンだと思う」と佐野元春は評価する。「非常に勇気づけられた出来事だった」と。
このプロジェクトはどこかのレーベルや会社の資本によってではなく、スタッフを含めたバンドの力と、それを支えてくれるファンによって、まずは音楽制作が成り立っていることを目指しています。「back to basic」。作り手が居て、聞き手が居る。真ん中に音楽があって、愛とハピネスがある。それがビジネスとして成り立っている。その基本を取り戻したいという発想のもと立ち上げました。まずは足元を固めた上で、我々の音楽を聞いたことのない人々にも伝えに行くつもりです。自力で活動していくことは「規模の縮小」を意味するものではありません。逆です。ちょっとおこがましいけれど、このままでは沢山の良質の音楽が死滅してしまうと云う危機感もあります。僕にとって、心ある音楽を作り続けている多くのミュージシャンが、今この問題に直面し、それを何とかしようとフントーしています。どこまで行けるのか、不明ですが、今自分たちに出来ることに全力を尽くしてみようと思います。いつもながら、根拠のない自信に満ちています。何故なら、音楽の可能性をいつまでもバカみたいに信じ、そして感じているからです。無限大だと思うのです。自分たちが諦めてしまわない限り。
山口洋2005年11月27日付け日記より
「よい曲」とは何か。佐野は言う。「ロングテールで人々の心を捉えていく力がある曲がグッドソング」であると。「満月の夕」を例にあげて話が進む。この曲が生まれたエピソード。震災。 しかし、「満月の夕」を含むヒートウェイヴのアルバム『1995』は廃盤で手に入らない。さらに先日、音楽配信サイトから突然削除された。
ふたりはこの問題について話していく。「廃盤」について、「配信」について、「送信可能化権」についてのソニーとの見解相違について。
ミュージシャンとレコード会社の関係を語る。そして、「音楽というものが何かということを、作る側も売る側も一緒になって問い直してみたいという時代になっている」と佐野元春は言う。このトーク、多くの人に聴いてほしいです。作る側も売る側も聴く側も。
話は次に「プロデュース」に移る。ヒートウェイヴ『1995』に収録された「BRAND NEW DAY/WAY」「オリオンへの道」は佐野元春によるプロデュース。山口洋も最近では矢井田瞳古明地洋哉などの曲をプロデュースしている。「レコーディング・プロデューサーというのは、常に説得力のある形でencourageしていくことがいちばん大事だと僕は思うんだよね」。お互いの「プロデュース」についてのエピソード。これが面白い。すごく面白い。
最後に、山口洋佐野元春にひとつ質問する。
「この時代に歌を書いていくのはどんな気分ですか」。
この質問への回答がまたいい。歌なんて書いたことのない僕にも多くの示唆を与えてくれる。勇気づけられる。
■■■ 追記
佐野元春深沼元昭山口洋藤井一彦による楽曲「世界は誰の為に」が2007年4月18日よりiTMSで配信開始です。「今ある仕組みに変革の口笛を」。
http://www.moto.co.jp/musicunited/
ちなみに、極東ラジオでは2001年に、山口洋を「encourage」した曲を特集しています。選曲リストはこちら佐野元春の「君を連れていく」を選曲している。また、ヒートウェイヴはこの曲をトリビュートアルバム『BORDER』でカバーしている。そのときのコメントはこちらです。
僕は高校時代に「サウンド・ストリート」という番組を聴いて育ちました(月・火・金を特に)。月曜日を担当していたのが佐野元春さん。この番組がなかったら今の自分はなかった。なので、極東ラジオが終了する2003年11月には(FAR EAST SATELLITEはそれから2年続いた)、佐野さんをゲストにお迎えしました。あるライブの打ち上げで、佐野さんに直接、「僕は佐野さんのサウンド・ストリートを聴いていて、いまラジオ番組作ってます。今度ゲストに出てください」と交渉して出演してもらったのです。 そのときのスタジオレポートはこちらです。