“SOUL OF どんと 2006”

“SOUL OF どんと 2006” に行ってきた。
もう何年も連続でSHIBUYA-AXでの開催だったから、チケットが手元にあっても当日までなぜかAXを思い浮かべてた。席は2階だけど下に降りて踊るのだとか(この前のフィッシュマンズもそうだった)。今年は、NHKホールなのだ。だから燃料も事前に購入して持参した。NHKホールはたぶんビール売ってないし。
開演前のいつもの映像がよかった。いつものといっても去年までとは少し違う。ハワイの部分がなくてその分、地球を揺らしてきたボガンボスのライブの魅力を味わえた。ボガンボスの映像を観るたびに(いまは一年に一度、この“SOUL OF どんと”のときだけど)思うんだけど、ボガンボスはひとりロックフェスだ。ロックフェスでの開放的な気持ちが、ボガンボスのライヴに行くといつも感じられた。あの映像観てるだけでも感じる。京都なんて奇蹟だ。なんであのとき僕は京都にいなかったんだろう。
映像が終わりスクリーンが消え、スカパラホーンズがファンファーレでどんと紅白の開幕を告げた。最初に登場したのは司会の竹中直人。赤の巨大なアフロ。スーツの柄がすごい(でもどんな柄かは忘れてしまった。3回ぐらい衣装替えをした。アフロも)。登場していきなり、どんとコールである。どんとー! どんとー! どんとー! 二階席から観てると、もう上着を脱ぎだしてる人がいる。右手を挙げてどんとー!
「紅白」なんだからキャプテンも要る。Kyonが紹介した。紅組のキャプテンは、天井から降りてきた。紅どんとである。当然、会場は湧く。白組のキャプテンも紹介された。降りてきたのは、もちろん白どんと。当然拍手喝采。紅どんと白どんととは果たして何なのか。でも描写は適当に進めていくことにします。これはメモ。
紅白の出場選手が次々にスクリーンに映し出される。各自が持っているボールの色でチーム分け。ハナレグミは白、くるり岸田は白、YUKIは紅(ボールではなくなんか違う赤いものを持ってた。帽子は白だったけど)、AMANAは紅、YO-KINGは紅……といった具合。そしてどんと紅白の始まり。トップバッター白組は永井さんで、第一声は「Everybody! おめでとう!」で、曲は「ポケットの中」。この曲に何度勇気づけられてきたことか。バンドはボガンボローザだ。続いて紅組のトップはLeyonaスカパラホーンズも加わって「泥んこ道を二人」。アレンジはスカ。身体の線にぴったりのピンクのジャンプスーツが「ガマンできない」ぐらい、「いやらしい」。白組はハナレグミフィッシュマンズ三木鶏郎ライヴと、ここ最近トリビュートイベントでハナレグミを観ること多い。ここでもあの反則技的な美声を発揮。wickedな「Hey Flower Brother」。Leyonaのスカ版「泥んこ道」、レゲエなハナレグミと今年はアレンジが大胆だ。次に紅組として出てきたのはYO-KING。「どんとさんはいつも楽しそうでした。それを当時僕はかっこいいと思いました。正しいと思いました」と話し、「夢の中」。白組は竹中直人で「憧れの地」。どんとはエキセントリックな印象が強いけど、この曲にしても作る音楽は堂々たるスタンダードだ。名曲ばかり。竹中直人は歌い終わるとすぐにまた司会として再び登場。息はあはあしながらもほんと喋りが面白い。楽器のセッティングのつなぎなのだけど、「こうして片づけていらっしゃる方もどんな人生を歩んできたのでしょうか、ちょっとお話を聞いてみましょうか」などと。ここで小嶋さちほさんもステージへ。「紅白歌合戦」を見るのが大好きだったそうだ。ミュージシャンになってなかったら「ヤングミュージックショー」(70年代にオンエアされていたNHKのロック番組)のディレクターになりたかったぐらいのNHK好きで、ボガンボスのデビューのきっかけもNHKホールのステージ。憧れのボ・ディドリーとのライヴもこのNHKホールだったそうだ(僕も行った)。そんな、どんとの「紅白」とNHKホールに関するエピソードが披露される。
さちほさんのバンド、AMANAはスクリーンに映し出されたどんとのライブ映像(コザのあしびなーというライヴハウスでの映像)とのセッションで「坊さんごっこ」。この曲、沖縄時代の曲だそうです。初めて聴いた。白組、Kyonの「魚ごっこ」の間奏には、ハナレグミが現れた。紅組、玉城宏志はローザのナンバー「ニカラグアの星」を。白の岸田繁は、ギターを弾きながら「橋の下」。ローザルクセンブルグだ。紅のUAフィッシュマンズのライヴでもUAが歌い出すと空気が変わった。この日も。歌(「トンネル抜けて」)が始まる前の、UAの呼吸だけで風が騒いだ。古謝美佐子さんはどんとが好きだったという沖縄民謡「にーびちすがやー」と「童神」。「どんとの二人の童神に、どんとの光を当てて」というようなことを曲の間に話していた。竹中直人さんがまた出てくる。どんとすげーなー。くるくるまわる。真っ直ぐ歩く。竹中直人すげーなー。続いて宮沢和史ジーンズに青系のシャツ。茶色い、深い帽子。ローザの「ひなたぼっこ」を歌う。「つらいとき、先が見えないときによく歌っていました。道の上で」。このバンドで歌えるってのはすごくうれしいだろうなあ。紅組のトリは、YUKI。アイドルのような、裾がふわっとしてるドレス。「最後にひとつ」。白組のトリは忌野清志郎。マントの下はどんとが『DEEP SOUTH』で着てた赤の格子模様のジャケットに似たもの。曲は「星になったのさ」というフレーズが繰り返される「孤独な詩人」。紅白はここまで。
竹中さんとハナレグミの司会の間に、CANDLE JUNEが背の高いキャンドルを何本もステージに用意する。サンディーのフラ。客席通路もフラ。続いて「波」。町田康が朗読する。これはオリジナルの詩らしい。さちほさんに続いてUAも歌う。素晴らしい。アンコール(?)は、全員での(ラキタ君も出てきた)「カリプソちゃん」と「どんとマンボ」。「どんとマンボ」は宮沢和史町田康がメインボーカル! ステージ上はこんな並びだ。
左から、
……ラキタ・永積・竹中・忌野・町田・宮沢・岸田・YUKI・小嶋・古謝・UA……
間奏のソロは玉城さんのギター、宮沢の三板、岸田君のギター、清志郎のホラ貝……。優勝チームは、天井から降りてきた金色のくす玉をYUKI(竹中さんに指名された)が引いて発表になった。結果は、テレビで後日オンエアされるそうなので明かさない。明かさないことにあんまり意味はないけど、これで終わり。


追伸
山口洋も何度もどんとさんのイベントに出演している。例えば2002年3月、沖縄での“どんと・ルック・バック”。

今日はどんとさんの三回忌映像祭「どんと・ルック・バック」に出演する。会場に着き、小島さちほさんと二人でリハーサル。いい曲だなぁ、とか、女性のベースって本当に母性を感じるなぁ、とかいろいろ。さちほさんはどんとさんとのタイム感に慣れているので(当たり前だ)、俺のヘンなタイム感にとまどっておられる模様。(すいません)柄にもなく緊張。まずボ・ガンボスが1992年に京都大学西部講堂で行ったライヴの映像が流れる。生前どんとさんが「ボ・ガンボスを知りたいのならこの映像を見ればいい」と云った伝説のライヴ。これがとんでもなく素晴らしい。何よりも自由。ルールは俺、そして君。グレイトフル・デッドに通じるそのスピリット(俺はデッドが好きだけれど、どうにも好きになれないデッドのファンも沢山いる)、それをこの国でやろうとしてた輩が居たなんて俺は知らなかった。みんな自由だった。観客の顔がそう語っていた。彼が一生をかけてやろうとしたことのほんの一部を垣間見た。どんとさんがモーレツな勢いで駆け抜けた人生において使ったエネルギー。その総量は並の人間の一生分をはるかにしのぐものだったに違いない。(山口洋 2002年3月9日の日記より)

また、ヒートウェイヴとどんとさんのライブでの共演音源はアルバム『NO REGRETS』に収録されている。