沢野ひとし『休息の山』

休息の山 (角川文庫)

沢野ひとしの『休息の山』という本を読みました。椎名誠の本によくへなへなの絵を描いてる人の本。椎名誠も何回も書いていましたが、この人、山好きなんだそうです。キリマンジャロやヒマラヤにも登ってるんだとか。
でもこの本は、「休息の山」というタイトルのとおり、そんな命を賭けるような登山ではなく、子ども時代は中野に住み、いまは多摩に住む筆者の、中央線にそのまま乗っていけるような山での山歩きの話から始まっています。だから、登山未経験者であり、先日の高尾山でのトレイルランで、これから山に惚れそうな僕には、すごくとっつきやすい。
僕がこれまで登山に興味を持てなかった理由のひとつに、山へのアプローチや装備をそろえるのが大変そう、ということがあります。朝霧JAMFUJI ROCK FESといった泊りがけの野外フェスに最初躊躇していたのと同じ理由。団体行動もどうも苦手だし。
でも、もっと気軽に歩きだせるんだな、というのがわかったし、〈山登りの爽快感は汗をかいたあとの休憩時にやってくる。何も考えず、ただボーッと山を見つめているあの放心したような状態を、なんと表現したらよいのだろうか。自分がまるで鳥や動物になったようでたまらなくうれしい気分になってくる。おだやかな気持ちなのだが、いくらか興奮している不思議な状態でもある。〉なんて文章を読むと、自分でもそれを体験してみたくなります。アイゼンとかピッケルとかザイルとか僕にはまだ形状が想像できない(いや、なんとなくはわかるんだけど、頭の中でごっちゃになってます)道具が必要な登山の話も出てくるけど、まずは奥多摩の山を歩いたり、走ってみたいなと思いました。
後半は野鳥についての話が綴られています。国立の雑木林の中で見たオナガや、日野の公園で見つけたゴイサギの話など、鳥の種類ごとにエピソードが描かれています(僕は登山道具と同じぐらい、鳥の名前も知らない!)。
もう一冊、先週読んだ山関係の本。
ジョン・ミューア・トレイルを行く―バックパッキング340キロ 【追記2月19日】この本も読んだ!
やまの劇場 【追記 2月21日】この本も読みました。
実際に山で遭難にあった人にインタビューしたドキュメンタリー、7ケース。地名(日本なのに、山の名前はほとんど知らないものばかりだった)や、登山の道具、専門用語など初めて知ることばかり。でも遭難者(=生存者でもある)の証言は、山の中で道に迷ったときの恐ろしさを想像させてくれた。「おかしいなと思ったら引き返せ」「道に迷ったら沢を下りるな」というのが鉄則だそうです。それでも、遭難するとパニックになってしまって冷静な判断ができなくなり、この鉄則に反した行動をしてしまうそうです。怖い。ちなみに救難費用は、この本に出てくるケースでは90万円から200万円(民間のヘリが出動してたらもっと高くなる)。登山するなら山岳保険に入らないとやばい。道に迷いやすい僕には他人事ではない。
ドキュメント 道迷い遭難 【追記 2月21日(夜)】この雑誌も読んだ!
やばい、山にはまってる。「山と渓谷」、初めて読んだ山の専門誌。コンテンツの質とボリューム、豊富さ、デザインの見事さ、写真、イラストのレベルの高さ等、雑誌としても素晴らしいし、新しい世界が目の前に開かれてしまった!
山と渓谷 2009年 01月号 [雑誌] 【追記 2月22日】この本も読んだ!
同じ著者の「道迷い遭難」のすぐあとに図書館でこの本を借りて読みました。滑落遭難者へのインタビューを軸にしたドキュメント。6ケース。ほんの数センチ、バランスを崩しただけで、遭難という異世界にまぎれこんでしまうというのは、ホラー小説と同じだ。登山をしたことのない自分にも、こんな身近なところにも死の危険が口を開いて待っていることがわかった。
ドキュメント 滑落遭難 【追記 2月22日夜】小説まで手を出した!
表題作「強力伝」は1956年の作品。富士山に荷揚げをする強力が、白馬山頂に風景指示盤となる五十貫(読後に尺貫法を調べて換算したら187.5キログラム!)の花崗岩をふたつ運ぶ物語、他の短編集。富士山測候所設立の苦労など。山岳小説ではないが、「おとし穴」「山犬物語」という短編は、手塚治虫火の鳥」になりそうな寓意を持ったフォークロア調の短編。
強力伝・孤島 (新潮文庫) 【追記 2月24日】この雑誌を読んだ!
特集、「山がわかる。」での「地図からわかる山」→今後の課題。「いまさら聞けない山の用語辞典」で、「コル」とか「ガレ場」とか「トラバース」など、山の本に出てくる知らなかった言葉がわかった。この一週間、いきなり、山の本ばかり読んでる。
岳人 2009年 04月号 [雑誌] 【追記 2月25日】
山岳小説。昨日「コル」とか「ラッセル」というような山用語を覚えたおかげで、情景が浮かぶ助けになった。登山やってる人がこれ読んだら面白いだろうなあ。
白き嶺の男 【追記 2月26日】山の読書はまだ続く。
タイトル通り。「山と渓谷社」が、山での遭難死をなくすために作った、というその思いが強く伝わってくる編集。図書館で借りた本だけど最後のページに「寄贈」のスタンプが押してあった。感謝。
山で死んではいけない (別冊山と溪谷) 【追記 2月26日夜】さらにこのシリーズ本も読んだ。
ドキュメント気象遭難 【追記 3月6日夜】さらに最近こんな本を読みました。
神々の座を越えて (ハヤカワ・ミステリワールド) 知識ゼロからの山歩き入門 サバイバルの基礎がわかる本 (Weekend Outdoor) 『日本百名山』と日本人―貧困なる精神T集