『ぶんぶん通信 no.2』を観た

鎌仲ひとみ監督のドキュメンタリー映画六ヶ所村ラプソディー』は、東中野・ポレポレ座と、埼玉の自由の森学園での上映会と、武蔵美の関野吉晴さんの授業でと、合計3回も観た。
鎌仲監督はいまスウェーデン山口県祝島を行き来しながら次作『ミツバチの羽音と地球の回転』というドキュメンタリー映画を撮影中。長い撮影期間のところどころでスウェーデン取材の報告会があったり(去年、新宿ネイキッドロフトに聴きに行きました)、今回の『ぶんぶん通信 no.2』という経過報告みたいな上映会がある。
瀬戸内海の田ノ浦にある上関(かみのせき)というエリアが、新たな原子力発電所の建設予定地となっています。祝島というのは、この田ノ浦にある島。今日、新宿のカタログハウス地下のホールで上映された『ぶんぶん通信 no.2』は、原発建設で田ノ浦が埋め立てられると、生態系にどんな影響がでるかという調査や、地元の反対運動を記録したもの。
海が埋め立てられると生態系がどう破壊されていくのか、というのは、5月に国連大学で聞いたシンポジウムからも想像ついていたとおり。沖縄・辺野古ジュゴンがここではスナメリに代わり、泡瀬干潟のムナグロ(渡り鳥)がカンムリウミスズメハヤブサに代わるぐらい。生態系は破壊され、漁で生計を立てていた人たちの生活もなくなる。原発を建てる側・中国電力から依頼され、環境アセスメントを行なった会社の報告と、大学の研究者たちの危惧は違うというのも、県側の対応も、六ヶ所村再処理工場と同じことの繰り返し。あーあ。
でもそこで、「また、しょうがないなぁ」と思ってしまうのは、祝島の漁師の言葉によると「海から視てないから」ということになる。確かに、僕には海からの視点なんてものはない。でも、鎌仲さんのカメラがメディアとなって、その視点を僕らに与えてくれ、それによって、目撃した個人ひとりひとりが自分の考えを形成していくことができる。
さらに、鎌仲さんはスウェーデンも取材し、原発に頼らない「持続可能な未来」を求める。経済的合理性ってやつも確かめに行く。
映画の完成の前に、途中経過を上映し報告を試みていくのは、上関原発はまだ止められるからであって(それは高尾山のトンネル工事も、宮下公園のナイキパーク化も同じ)。祝島では27年間で1000回を越える原発反対デモが住民たちで行なわれてるそうだ。2008年12月に、カヌーイストたちやサーファーたちが合流して、彼らはカヌーとサーフボードのパドリングで、とても綺麗な海を渡った。彼らの隊列は先日観た「クラ」を連想させた。新たな出会いで、輪が大きくなっていく。