『食の未来』


「食の未来」予告編。この日本語字幕版を観ました。

先々週と同じく、武蔵野美術大学に行ってきました。関野吉晴さんの授業です。先週、僕は辻信一さんにインタビューしたのですが、関野さんのこの授業とびっくりするぐらいシンクロしていました。
遺伝子組み換み食物をテーマにしたアメリカのドキュメンタリー映画『食の未来』を上映しての講義。死体も血も残虐シーンもまったく出てこない画面ですが、前半はとにかく暗澹たる気持ちになります。
先週、『六ヶ所村ラプソディー』のトークショー桑原茂一さんが「知ることは怖いし、めんどくさい。でも怖いけど知ると勇気が出てくる」と話していたのですが、前半はまさに知ってしまって怖いことばかり。
僕は……またもや遅刻してしまったのでオープニング約20分は見逃し。あと、メモを取ってなかったので細かいところで間違っていたらごめんなさい。でも大筋はこんな内容のドキュメンタリー映画です。
アメリカのバイオ企業「モンサント」がどんどん訴訟を起こしてるそうなのですが、それは農家に対して。農家が収穫したキャノーラ(菜種)に「モンサント」の遺伝子改造種が混じっていると、特許侵害で莫大な額の訴訟を起こす。その企業は遺伝子に対する特許を取っている。普通の農業をしている人の畑にもそれは風に乗って運ばれて、従来の種と交雑してしまう。すると、それを「発見」して訴える! 従来の種と遺伝子改造種は見た目で違いはわからず、見分け方はそのバイオ企業の除草剤を使ったときに「枯れる」のが従来の種(遺伝子改造種は枯れない!)。
メキシコはトウモロコシと暮らしてきた7000年の歴史があり、土地土地に合った100種類ものトウモロコシがあるそうです。「トウモロコシはメキシコの風景」という言葉があるぐらい(知らなかったけど)。そのメキシコにアメリカから遺伝子組み換えのトウモロコシが大量に入ってきて、いまメキシコのトウモロコシ農業は壊滅の危機にあります。アメリカのトウモロコシはメキシコの従来種よりも安い。それはアメリカが国の農家に補助金を出しているからです。
「遺伝子組み換え食物」こそが人口問題、食糧危機を救うと主張している人がいます。でも、メキシコでは従来の農家が農地を失い、難民になっている。飢える人は増えている。アメリカの企業だけが儲かるシステム(辻信一さんにインタビューした記事の一部→)。
世界銀行や「先進」国が「開発途上」国へ金を貸し付ける。その金を返すために「開発途上」国の農家はそれまで自分たちが食べるために栽培していたものを換金作物に転換するしかなく、自給率が減って食べ物の値段が高くなっていく(→飢える人が増える)という傾向も映画は紹介していました。 アメリカのバイオ企業はいま改造遺伝子に対する特許を国際的なものにしようとしています。そうなると、(従来の種と次々に交雑するから)いずれ世界中のあらゆる農作物や牧畜はアメリカの企業に支配されてしまうでしょう(何を栽培しても特許料を取られてしまう!)。
関野さんは、遺伝子組み換え食物の人体への害についてはいろんな説があるから自分たちでも調べてほしいと言いました。ただ、遺伝子組み換え食物による単一栽培への流れは生態系の破壊だと言います。アマゾンでも先住民たちはいろんな植物を育てている。その方が土地にいいからだと。モンゴルでもいろんな動物を飼うことによっていろんな種類の草を食べ、土地と一緒に暮らすことができたと話します。
映画の後半で、ようやく希望が見えます。
カリフォルニアのいくつかの郡で遺伝子組み換え食品の表示に関する法律が消費者たちの運動によって次々と可決されていきます。有機農業の割合が増えていってます。地域に根ざした農業を支援する動きが高まっています。効率を求める単一栽培から、環境によい多様性、持続的な農業へ。(※なので、僕は翌月、サンフランシスコのファーマーズ・マーケットを見学に行った→
映画の最後は、「決めるのはあなた」という言葉で終わります。
現状は暗澹たるものかもしれないけど、これは僕らで解決できる問題なのです。何も知らないうちに選んでいたものを、知って決めればいいのです。
という授業でした。




メキシコのタコス屋台大好き。